Shadow★Man~変態イケメン御曹司に溺愛(ストーカー)されました~

美保馨

文字の大きさ
上 下
302 / 399
恋の焼け跡④

思い出せ

しおりを挟む



「……っ!」


背中がナイフで裂かれたように痛み始めた。熱を孕んで今にも炎上しそうだ。


苦しい……、誰か、ああ、外に貝森さんがいるはず……。

声にならない声が、絞められた喉で塞き止められる。

息が、できない。


意識を手放さないように汗だくの体を強張らせていると、突然、髪を鷲掴みにされた。


——ガタンッ!ガシャン!


体のあちこちが椅子に叩き付けられると、そのまま床にねじ伏せられてしまった。


「……いっ、」


私は木製の床に顔面を擦り付け、うめき声を上げた。
両腕は背中の後ろで拘束され、完全に身動きができなくなった。


背中が、焼けていく。

背後から、男の声が呪詛のように呟かれた。



「教えてあげようか」



「っ……な、にを」



「お前が忘れていることをさ」



服が引き裂かれた。



「——っ!!!!」



涙が床に滲んでいく。
露になった背中は、自分の熱気から解放され強張った。
ジンジンと脈を打っている。

ふいに背筋をそっと指でなぞられた感触に、頭の天辺からつま先まで震え上がった。



「ああ、あった。
この傷を覚えているかい」



——傷?

傷なんて、背中に無い。


そう反論することも叶わず、男は矢継ぎ早に言葉を発していった。



「これはあの男がお前に付けた傷だ」



「あの……男……って」



力を振り絞り声を上げた。



「名前を呼ぶことすら忌々しい、あの、男だよ。
お前が恋焦がれて止まない千羽鶴さ」



……千羽鶴……千鶴?



「10年前だ。思い出せ。
そしてあの男を心の底から憎め」



千鶴……千羽鶴……。

悲しい顔をした、病院の屋上で出会った、男の子。

お兄ちゃん。



背中が炎上したかと思うと、私の意識は遥か遠くへ飛んでいった。


高く、高く、高く。
誰の手にも届かないほど高く。


体を放れ、男から放れ、何もかもを置き去りにして、真っ白な彼方へ舞い上がった。






…………






…………











 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...