288 / 399
恋の焼け跡④
気が気じゃない会話
しおりを挟む「澪様」
「は、はい!?」
緊張に耐えかね、固唾を飲み込む。
「千鶴様から常々、お話を伺ってはおりましたが……」
「……はいっ」
変な汗が頭から垂れ流れてきた。
「挙式は地上を見下ろしての星空、とのことで?」
「は、はい!?」
「いやぁ~この貝森、そのようなロマンチックなプランを千鶴様からお聞きした時には、胸が高鳴りましたぞ!
永遠の愛は銀河で誓われるのですな!?ほっほ!これはこれは、挙式が楽しみで眠れませんな!」
……何だか私の思い過ごしだったみたい。
この人も、千鶴属性の人間だわ。
そんな私の憂いも貝森さんのサンタクロースを連想させるおおらかな笑い声の前では、小さなゴミのように思えてしまった。
「あの、そういえばどこへ向かってるんですか?」
華やかな世界に目が眩み、すっかり目的地を忘れ去ってしまった。
「おお、そうでしたな。
藤堂の別邸へ向かっている所でございます」
「べっ」
「おや、どうされましたか?」
「……いいえ」
一瞬だけ心臓が喉元まで上昇してきたが、それは俄かに沈んでいった。
いいわ、もう何があっても驚かない。
別邸でも、プライベートビーチでも、世界各国に所有する別荘でも、何でも来い。
「わたくしのお部屋なんですけど、今は別邸の方を使用していますの!」
一見嫌味に聞こえる発言だが、弥生ちゃんの可愛らしい声で話されると不思議にもそんな風には全く感じなかった。
むしろ鼓膜に優しく響くようだ。
「そうなんだ……あ、千鶴もそこに?」
話の流れの都合上、口が勝手にそれを聞いてしまった。
今はあまり千鶴のことを話題に出したくないというのに。
ふいに心臓が、針を刺されたように痛んだ。
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる