Shadow★Man~変態イケメン御曹司に溺愛(ストーカー)されました～

恋の焼け跡③

詮索は禁物なのに

「そうですね……みんな元気ですよ」


私は少し戸惑いながら返答をした。
今は私情よりも、藤堂さんを元気付けることが先決なのだ。
余計な詮索は禁物であろう。



「でもね……心配だわぁ。
紫伸と千鶴は、年々仲が悪くなっているように見えるのよ。
私の耳にはあまり入ってこないけれど、何となくまだ、わだかまりが残っているような気がしてね……。せっかくの兄弟なんだから仲良くやってほしいのに。……ああ、千鶴は大丈夫かしら」



余計な詮索は禁物。
禁物なんだってば。
黙れ、私の心臓。

バクバクと鳴り始めた鼓動にそう言って聞かせたはいいが、藤堂さんの言葉に何と返事をしていいのか分からなくなった。

だって……それは私も聞きたいことだから。
千鶴は大丈夫かなって。

会いたいとか、そんなことよりも今は。
ただ、元気でいるかどうかだけでも知りたいのに。

なのに……。



「ああ、紫伸……。あの子も大丈夫かしら。
やっぱりあの子達２人は、相容れないのかしら……。
皐月さん、どうしたらいいの……。
私に取っては２人共、とっても可愛い孫なのよ。どうしてあんなに憎しみ合って……。
いいえ、それは私の勝手な押し付けなのかもしれないわね。あの子達の想いも量らずに……。貴女にも、苦労をかけたわ。
誠一のせいで、こんなことに……っ」



藤堂さんは涙目になってシーツを握った。

一体、藤堂家に何があったというのだろう。
他人である私が知らない何かが起こっているのは確かだが、果たしてそれを知る権利があるだろうか。

とりあえず、藤堂さんを悲しませるわけにはいかないので、話を合わせて慰めることしか今の自分には出来なかった。



「ち、千鶴は、元気ですよ！
よく笑顔で私に話してきますよ！」



少なくとも先月まではそうだったから、これは完全に嘘とは言えない。完全に真実とも言えないけど。



「そうなの？ああ……良かった。
あの子ったら、最近は音沙汰も無くて。
でも、皐月さんにはちゃんと顔を見せているようだから良かったわ。やっぱり息子は母親が恋しいものよね……あら！
アナタ、誰かしら？」


「……え」


「見かけないお嬢さんね。実習生さんかしら？あらあら、お名前教えてちょうだいな」


途端に藤堂さんの記憶が、飛んだらしい。

今度はちゃんと私を私として見てくれている。