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恋の焼け跡③
灰かぶり
しおりを挟むあーあ。マジ、もうこれ、ありえんでしょ?
なんて呑気な声が、他人事のように頭の中で聞こえた。
「マジてめーぶっ殺すかんな!
顔面グチャグチャにして二度と口聞けなくなるようにしてやるから!」
ああ。
今の、私じゃなくて凪が言ったの。信じられる?普段はブリブリして猫撫で声出してる小娘が、般若の面を張り付けたような険しい顔で、こんな品の無い台詞言ってんの。DNAってさ、コワイよね。
力の入らないはずの腕に無理矢理力を入れて、散弾銃のようにあちこちから飛んで来る凪の拳を止めた。
知ってた?
凪って普段あんなにオンナノコしてるのに、マジギレしたら私なんかよりずーっと恐いんです。
「……ちょ、ま、本気で……いっ!」
ヤバ。凪のパンチを食らった腕が、奇妙な音を鳴らした。
そして私が痛んだ腕を気にしている間に、胸の下辺りに容赦ない衝撃が走る。
嘔吐寸前、私は咳き込みながら床に伏せた。
凪はもはや地球語とは思えない言語を叫び散らして、床にしゃがみ込む私の頭に灰皿を叩き付け自室に消えた。
煙草の灰が目の前を舞い、ポロポロと毛先から転がり落ちてきた。
体中が煙草臭い。あと、腕と腹が痛い。なんかもう、本気で何もかもがどーでもいい。本格的にね。
灰かぶり。これじゃリアルシンデレラである。
しかし何もかもが、どうしようもなく、どー・でも・いい。
あーあ。明日は遅番だし、ボス・フェアリー青木も出勤だし、何だか人生お先真っ暗って感じだわ。
あ、灰色か。
私は今、頭から爪先まで煙草の灰まみれだもん。
シンデレラ万歳。ばんざーい。
神様、明日私の勤め先めがけて核ミサイルが発射されますように。
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