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恋の焼け跡③
第二期の実習
しおりを挟む前提であるその知識というのは、あくまでも前提だ。
技術が無ければそんなもの無駄に等しい。
しかしその肝心な技術が、どうも私には備わっていないようだ。
気後れというか、ただ単に怯えているだけなのかもしれないが。
学年末考査が終了すると、瞬く間にその時はやって来た。
現在、第2期の介護実習の為に老人ホームを訪れている私の胃袋は最高潮を迎えていた。
胃液がタップダンスを刻む毎日である。
ズキズキと、とてもご機嫌だ。
リズミカルにも程があるだろう。
そう、自分の『運』というものが底果てたとしか思えない事態に陥ってしまったのだ。
「土屋さん!しっかりしてよ!
全くもぉ~……!」
横綱の逞しい脚の肉を思わせる分厚い皮膚の上にたっぷりと塗られたファンデーションが、青木主任の赤ら顔を一層醜く見せた。
数ヵ月ぶりに見る青木主任はちっとも変わらない。
だけど彼女に浴びせられるヒステリックなつんざき声さえも、私の空っぽの心には何ひとつ響かなかった。
「すみません」
悪びれもなく私は答える。
少しは泣きそうな顔でもしたら同情が買えるのだろうけど、自分はそんな器用な真似は出来ない。
実習が始まってからというものの、もう両手の指では数え切れないほど怒鳴られている。
唇はカサカサで気持ち悪いし、胃は始終タップダンスに夢中だ。
これらの原因はストレスによるものだと思うけど、別に青木主任に怒鳴られることが理由ではない。
そんなの第1期で慣れたもの。
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