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恋の焼け痕②
千鶴に嫌われちゃった
しおりを挟む――ピーンポーン
間の抜けたチャイムが背後から鳴った。その音に私の心臓がひっくり返る。
ドタバタと足を鳴らして玄関まで駆け寄り、乱暴にドアを開けた。
「こんちわ~……あ、アネゴ!
久しぶりッスね~!な~んて……
……あの、凪、います?」
今日の私の心臓は、大忙しだ。
急に激しくバウンドしたり、
よじれたり。
だけどそれに疲れたみたい。
ドアを開けた先に総大くんがいたというだけで、心臓が胃の下辺りまで急降下した。
空気の抜けた風船みたいだ。
何だか体が冷えてきた。
「あ、居ないとか?
あー、そっかそっか。
平日だし学校ありますもんね!
でも、あれ?アネゴは今日学校無いんスか……アネゴ?」
妙にソワソワと落ち着き無い様子の総大くんは、まるでバレンタインデーの中学生男子そのものだ。
だけど、そんな甘酸っぱい雰囲気はすぐに消えた。
「……ど、どうしたんスか。
またダンナが下着盗んだとか……あ!今のは内緒で」
「……嫌われた」
「はい?」
「……千鶴に、嫌われちゃった」
「ははっ、も~アネゴったら。
今日はエイプリルフールじゃなくて、バレンタインッスよ?
……ま、オレは今年貰えそうにないけど」
「違うの!!」
「ひっ!
え、何、ど、どうしたんスか?
す、すいません」
「……違うの、怒ってるんじゃないの。でも、いつもなら腹立って……それで終わりなの。
なのに、どうして……よく分からない」
「アネゴ?大丈夫ッスか?」
総大くんの声が、すごく遠くに聞こえる。
ああ、音がだんだん小さくなっていく。
「……ダンナとケンカしたんスか?」
ケンカ?そうなのかな……あれは単なるケンカだったのかな。
「どうやら違うみたいッスね…………あー!!!!」
「!?」
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