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恋の焼け痕②
破裂するのは身体ではなく心
しおりを挟むカタカタと揺れる指先がテーブルの上にあった携帯に触れると、いつの間にかアドレス帳の中からアイツのアドレスを探していた。
どんなに受信拒否を施しても送られてくる、アイツのアドレス。
私の名前と誕生日が入った、アドレス。
『ごめん、帰って来て』
それだけ打ち込むとすぐに送信した。
初めて送った、千鶴へのメールは謝罪文だった。
でも何十分経っても返事が無かった。
苦笑いを浮かべアイツの携帯は送信専用なのかと思ったが、そんな馬鹿な話があるわけない。
心臓がぐにゃりと動いた。
鉛が頭上に落ちてきたかと思った。
そんな気分だ。
気が付けば着信履歴の中からアイツの番号を探していた。
いや、探す必要も無かった。
だって私の着信履歴は、
『藤堂千鶴』で埋められていたから。
どんなに着信拒否を施しても繋がってくる、アイツの電波。
小刻みに震える指を懸命に動かして、今度は電話を掛けてみた。
緊張で頭が破裂しそう。
だけど、実際に破裂するのは頭なんかじゃなかった。
『お掛けになった電話は……』
破裂するのは心なのだ。
どんなにショックな時だって、外傷は無いのだ。
頭の中でサイレンが鳴り響いても、部屋の中は静まり返っている。
ただ涙だけが、外と中を繋げてくれる。
なのに……涙さえも今は無くて。
今はただ、この状況を把握することに必死だった。
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