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恋の焼け痕
チョコレイト
しおりを挟む「大体ね、我が国のバレンタインという行事は、女が男にチョコを渡す日じゃないの?
まぁ、アンタにチヨコレイトなんてモノは用意していませんけどっ」
私は嫌味をたっぷりと込めて、特に『チョコレート』の部分を強調させてそう言い放った。
「えー!マジで言ってんの!?千鶴さん可哀想じゃんかぁ!
ここまでバレンタインに浮かれてる人、初めて見たよ~?
……私、やっぱ真面目に学校行こうかなぁ」
これはまあ驚いた。
あの浮かれポンチ代表の凪が、『真面目』なんて単語を口にするとはね。
それはこの変態の浮かれ様が、
1人の不良娘の性根を叩き直すまでに悲惨だという証拠だ。
だからと言ってお礼なんか言わないけどね。絶対。
「なっ……、澪っ、製菓会社の陰謀にあえて荷担する、日本人女性のお約束を裏切る気ですか!?」
「アンタ……何故そこまで分かっていながらチョコが欲しいのよ」
純粋に呆れた私はそう言った。
「あーもー、やってらんな~い。
私ぃ、やっぱ彼氏んトコ行くぅ」
そうウンザリ気味に言うなり、凪は軽く身支度を整えて玄関に向かった。
日課である顔中塗りたくった化粧のひとつも施さずに。
「ちょっと!コイツと2人きりにするんじゃないって何回言ったら分かるのよ!
アンタ、実の姉を見殺しにするつもり!?」
ていうか、真面目に学校に行くという件はどうなったんだ。
「はいは~い。あんまし見せつけないでよね!寛大な私も、さすがにイラッとしちゃうからっ」
——バタン!
「は、はぁ~!?」
寛大?イラッと?
ふざけないでよ!
私は声にならない苛立ちを胃の奥にしまい込んだ。
たった今、ドアの向こうに消えた妹に、本気でブチ切れそうになった。
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