Shadow★Man~変態イケメン御曹司に溺愛(ストーカー)されました～

恋の焼け痕

全身ラッピングリボン男

そんな低俗な言い訳で自分を言い聞かせ、私は早急に布団の中に潜り込む。

ただひたすら身を隠したいがための、無駄な行動であるにも関わらずだ。


「ほねぇーろーしたん？」


泡だらけの口をした凪が、歯ブラシをくわえながら寝室に入ってきた。

そして無神経にも私を包む布団を剥ぎ取ると、不審な人物を見る目でこちらに視線を送ってきた。


「がっほーひからいお？」


「行かない！だってバレンタインだもん！」


「ひゃー？ひょっほ、うらいひへふふ～」


通訳をすれば、『ちょっと、うがいしてくる～』と凪は言って、私の部屋を出た。

凪が洗面台でうがいをしている間、私は汗だくになりながら般若心経を布団の中で唱えた。

夢中でブツブツ唱えていると、再びベッドの脇に凪が戻ってきた。
今度はさっきよりも大慌ての形相で。


「お姉ー！ビックリだぁ！あのね、玄関の外にね、ラッピング用のリボンで全身グルグル巻きの千鶴さんが立ってるよ！」


「あー！！人が現実から逃げてるってのに！！」


玄関のドアを開けた瞬間から起こった私の挙動不審な行動の理由を、ご丁寧にも凪が説明してくれた。

こんなこと、誰が予想をしただろう。
１４日の今日までは、そんな素振りを全く見せなかったというのに。
いや、だからこそ何かあると多少の危惧はしていたが。

何のコトって？
アイツのコトよ、アイツ！！
ああ、無性に殴りたくなってきた。


私は仏頂面を真っ赤な顔に張り付けて、怒りの熱にこもった布団から出た。

そして寝室から出れば、歯磨きを終えた凪と、よく見知った男がリビングにいた。

私の視神経はついにおかしくなったらしい。
その得体の知れない物体が視界に飛び込んできた瞬間に、『ああこれは幻覚だ』と呟いてしまった。