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恋の焼け痕

やすむ

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明くる朝、私はあれからほとんど睡眠を取れなかった自分に舌打ちをした。

おかげで頭の中は、モヤモヤと煙をまとったような不快感でいっぱいだ。
溜め息をまた1つ、2つ。
吐き過ぎて、呼吸困難になりそうだわ。

ふしゅ~、と萎んでいく風船を思いながら学校の支度をしていると、目覚めパッチリの凪が自室から出てきた。


「ふはぁ~。ひゃ~よく寝た!おはよ、お姉っ」


私の中のテンションというモノが、ガタガタに落ちていったのが分かった。


「おはよ」


「あれ~、いつにも増して寝起きサイアクじゃない?
ってか、クマ出来てるよ!?あ!お肌荒れてる!イヤ~!」


「あっそ」


「マジだよ、ほら鏡見なよっ。
も~、寝不足は美容の大敵なのよ?基本中の基本でしょー?
イヤ~もぉ~っ」


心底、その『イヤ~もぉ~っ』の意味が分からない。
それほど私に取って、美容は大した意味を持たないというコトだ。

しかし自分の片割れは、その美容とやらに生きているようなモノ。
土屋凪の脳内構造は、美容で埋め尽くされていると言っても過言では無い。

もうアレだ、全身美容整形疑惑のあるゴージャス姉妹の一員にでもしてもらえればイイ。

そんなコトをぼんやり考えながら、私は凪を堂々と無視する。


「ねー、ねー、私ぃ、今日、
やすむ!」


やすむ?何だソレ。
いつから2月14日は祝日になったのだろうか。


「ねーってば、別にイイでしょ?
もぉどーせ留年決定だしさー」


「は。マジで言ってんの?
親に泣いて謝れば?」


この親不孝者め。

しかしその後に加えられた凪の発言によって、私は尚更そう思うのだった。


「それにね、だってね、
バレンタインなんだからさ!」


だって、聞きました?
勉学に励む、全国の学生諸君に問いたい。
そんな理由で学校を休んでもイイ決まりがあるの?
それを知らないのは、時代遅れの私だけでしょうか。

目を点にして、浮かれはしゃいでいる不肖の妹を見つめながらそう思う。

 
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