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恋はさざ波に似て③
ほっぺに
しおりを挟む一方、南条セイヤも私と同じく、眉を潜めて疑問符を浮かべている。千鶴からサングラスを受け取ると、『ま、いっか』と言うような気の抜けた表情に戻ったが。
「あ~、こちらこそぉ。
ていうか、ゴメンねぇ。
昨夜はミオちゃんと~……
きゃはっ、こんな朝っぱらから言えないよーなコトしちゃって、ごっめーん」
「……な!な!」
「はぁー!?冗談じゃ無いわよ!
アンタ私に何した!?」
「えぇ~?自分の体に聞いてみたら?アハハ!
てかさ~君達、このクソ寒いのにビーチで追いかけっこ?
何の流行それ?頭おかしいんじゃない?バッカみたーい」
んだと、この三十路越えのオヤジが!
私と千鶴は、初めて意見が合ったようだ。
私達は2人共、とっても南条セイヤをぶん殴りたい顔してる。
「アハハ!マジ笑える~!2人共、ぐしょ濡れだしぃ!
風邪引いて死ぬよ?キャハハー!ウケルー!!シヌゥー!!」
「すみませんが。足に重石をくくり付けて、そちらの海へ沈めても宜しいですか?」
「っな!?そこまではしなくてイイから!早まるなぁ!!」
私は今にも殺人を犯しそうな千鶴を止める。
「なーんてね。ま、ご想像にお任せするよ。
……それじゃあ僕はこれで。午後から仕事なんだ。また会おうね、ミオちゃんっ!
ソーダイから連絡先聞いちゃったからさ」
「……なっ!あのモップ頭、勝手に私の連絡先教えるなよ……!
人の個人情報を何だと思ってんのかしら」
今は亡き総大くんに宛てた愚痴を私が呟く一方で(そういえば総大くんはどうしたんだろう)、南条セイヤは相変わらずどこ吹く風で、ひょうひょうとしている。
「じゃ……またねっ」
ててて、と小刻みに歩を進めて、南条セイヤは私の傍に寄ってきた。
もう1発だけ記念に殴っておくべきだろうかと悩んだが、それは叶わなかった。
突然、左の頬に感じた『むにっ』という感触に私はたじろぐ。
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