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恋はさざ波に似て③

南条セイヤ、海辺に現る。

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「バッキャロー!!
私は凍え死ぬほど寒いわー!!
……って、こらー!
逃げるなクソ野郎!!」


バシャバシャと波を割るように踏み付けて、千鶴は全力疾走を始めた。というか全力失踪。
どんどん遠ざかっていく。



「アハハ!
僕を捕まえてごらんなさ~い!」



「……っとにもう~。
……おー、おー、捕まえてやるわよ!捕まえて、ボッコボコにしてやるわぁー!!」



ウフフ、アハハ!

真冬の海で男女が追いかけっこしているよ!
なんてロマンチックなのかしら!



「ぅおらー!!待ちやがれぇー!!」


「澪ったら、遅いですよ~!
そんなんじゃ、永遠に僕を捕まえる事が出来ませんよっ」


振り向き様にウインクすな!
あほんだら!

大の大人が2人、片や花畑を駆け回るような天使の笑顔で、片や地獄を駆け回るような鬼の形相で、静かな真冬の海を必死に走っていた。

きっと後ろを振り向けば、砂浜が2人の足跡だらけで悲惨な状態に……あ。


数10メートル後方に、見覚えのある男が立っている。

思わず立ち止まって目を凝らした。



「お~い!ミッオちゃ~ん!
何して~んの~!?」



ブンブンと手を振りながら私の名前を呼ぶ、あの米粒みたいな人間は……もしや。


「げ、南条セイヤじゃん」


汗がしとどに流れる。

あの横暴なアイドルから逃げようと試み回れ右をすれば、
お次は千鶴が前方を塞ぐ。

というか、気が付けばすぐに目の前にいたので、顔面をヤツの胸に強打してしまった。


「あ、ん、た、ねぇ~……!
逃げてたんじゃなかったの!?」


「いえいえ、澪の危険を感知しましたので戻って来ましたよ」


危険?ああ、確かに危険かもね。

宇宙人が、海辺にまで侵略しに来たんだから。

 
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