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恋はさざ波に似て③
真冬の海でイチャつく
しおりを挟む「い、いえ……嬉しいんですけど……ああ、どうしましょう。
澪が……
ああ、夢みたいです……っ。
夢じゃ、無いんでしょうか……」
両手で顔を揉みくちゃにして、猫が前足で顔をこすっているようだ。
紅潮した顔でそんなことをしている千鶴が、可愛く想えた。
「いえ、夢でも構いませんよ……
はい!澪が、大好きです!
もう、ほんっと、これ位好きです!!」
――ザッパァ!!
「ぎゃああっ!」
カップルの水のかけ合いっこ、と言えば海に付き物。
しかし、ロマンスの欠片も見当たらない、この状況はいかがなモノか?
両手ですくえるほどの大量の海水を、私めがけて思い切り浴びせてきた。
お陰で、頭から靴下までビショビショだ。
「……てんめ~……。
ふざけんなぁっ!!ヤケになって海水ぶっかけてくんじゃねぇ!!冷た!!ぶはっ!」
「もっと、もっと、もーっと!
これ位です!!
いや、まだ足りません!!
この海の水、全部使ってでも足りない位です!」
――バシャー!バシャー!
「だ、ば……ちょ、あ……止めなさ……ひぃ!!」
「うわぁー!!
ご町内の皆様聞いて下さい!!
ついに澪が、僕に愛の告白をしました!!」
――バッシャーン!!
『あっぷあっぷ』と、みっともない声が自然と出てしまう。
これは何のコントだ。
あぎゃ!
海水が鼻に大量に入った!
そのまま直結して口から出てきた!塩っぱい!!
……マジ殺す。
「てめー!真夏のビーチなら百歩譲るけどなぁ、今は真冬よ!?
海水を頭からぶっかけるヤツが、どこの世界にいる!
死ぬでしょーが!!」
「僕は熱いですー!」
上から下まで火で焙られたような真っ赤な千鶴が、精一杯の誤魔化しをしてきた。
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