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恋はさざ波に似て③

二日酔いと頬擦り

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ふっくらとした枕に、苦痛に歪んだ自分の顔を埋める。
うつ伏せの体勢の為、千鶴の顔は見えないが、声と手付きから察するに、コイツは千鶴なのだろう。

ということは、今私が顔を埋め込んでいる枕も、
体を沈めているシーツも、
千鶴……いや、
魔物……いや、
変態のモノなのだろうか。

あえて変態と変換させる自分に笑いが込み上げてくるが、今はその笑いすら狂気染みているのだ。


「可愛そうに、これは頬擦りでもしなければ治りませんね」


千鶴は布団の中に顔を潜らせてきた。
私の頬が千鶴の低温の頬に触れ、ビクンと揺れる。

ていうかさ、ちゃっかり聞いてたケド、今の発言は『可哀想』じゃなくて『可愛そう』に聞こえた。
これって自惚れだとイイんだけどね。


「はい、可愛いと言いましたよ」


ボソリと耳元でダイレクトに囁かれ、肌が栗立つ。


「クソったれ!!
勝手に心の中の独り言を盗み聞きするな!キモイぞオマエ!!」


いや、『心の中の独り言を盗み聞きするな』って明らかにおかしな事柄よね。
我ながら自分の放った言葉が信じられない。
でも実際に現実であったことなんだから、仕方無いでしょ!?

誰か言ってやってよ!
読心術は卑怯だってさ!


「気持ち悪い、でしょう。正しい日本語を……まあ以前にも同じ事を言った覚えがあるので割愛しますが」


「いや、そこまで言ったんなら全部言えよ」


「おや、全部言っても良いのですか?それではお言葉に甘えて……
ああ、林檎の様に真っ赤なその頬に接吻したいです。いや、接吻では物足りないのでいっその事食べてしまいたいです。
おやおやそこまで哀願するのなら、頬のみならず全部食べて差し上げましょ、ぐ、あがぁっ……」


「おやおや、そこまで全部言うのなら喰らわせて差し上げましょう。みぞおちに肘鉄を」


千鶴は咳き込み、私を覆い被さったまま倒れ込んだ。

白い枕にもう1つ顔が埋まる。
つまりは、同じ布団に私と千鶴がうつ伏せで寝ている状態だ。
ありえなさすぎるわ。

ああ、忘れていたけど頭いてぇ。
コイツのお陰で更に痛みが増したわ。どうしてくれるよ、全く。

痛みさえも忘れさせてくれると言ったら、聞こえはイイけどね。
だけど密着状態とも言えるこの状況で、顔をタコみたいに真っ赤にさせながらゲホゴホ咽ている男には、情緒の欠片も感じられないわ。



 
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