上 下
208 / 399
恋はさざ波に似て③

哀しい顔の少年

しおりを挟む



ああ、大好き。

呼吸が絡まるほど、大好き。

肺が潰れてしまうほど、大好き。

背中の、大きな傷痕がジクジクと痛むほど大好きだ。


背中の、あなたに傷付けられた
この傷痕さえも……愛おしい。


燃えるように蘇る、傷痕がうずくよ。



背中が、痛い。


頭も、痛い。



頭、グルグルと、螺旋を巻いている。


誰かが土足で階段をはい上がっている。


頭が割れそう、止めて欲しい。


ズキズキ。


ああ、
これって二日酔いってヤツだ。






まどろみの中、じわじわと覚醒が迫る。
白いシーツと白い枕に包まれていた私は、ゆっくりと瞼を開く。

ここはどこ、私はだぁれ?
だなんて冗談を、今まさに口にしそうになった。

だって、ここがどこで私が誰なのか一瞬分からなかったのだから。


あの愛おしい感情を、私は知らない。

意地悪な顔が好きだなんて、
そんな無謀なことも決して想わない。

だから分からなくなった。


私は大嫌い。

夢の中にいつも出てくる、
あの哀しい顔の少年は大嫌いだ。


だって、私を……


背中を……


 
しおりを挟む

処理中です...