上 下
204 / 399
恋はさざ波に似て②

南条セイヤ様

しおりを挟む


ついに……やらかした。


アイドルの頭に思い切りゲンコツをかましてしまった。

それは垂直に、見事に入ったものだから、もう誤魔化しようが無い。


「男のクセになよなよするな。
偽ってるなら、最後まで偽り通せよ。
もう嫌だ?ふざけんな。
偽りって言うのは、死ぬまで隠して初めて偽りだっつーの!
今日会ったばっかの私に言っちゃう時点で、
アンタの言うそれは偽りだなんて大層なモンじゃない!
ただの愚痴よ、愚痴!」



ああ、もうイイや。

こんな性格の自分にも慣れてきたから。


ていうか、酔っ払ってたら何でも言えちゃうのね。

スラスラと魔法のように
可愛げの無い言葉が出ちゃうわ。



「……アンタ、何様?」



「他人に流されるまま流されて、自分の意見も言えないような人間様!
アンタが言う、大嫌いなヤツの1人なのよ私は。
そう、アンタの悩みなんか知ったこっちゃないし、それに同情するような器量のある人間でもない。
ただの短絡的な人間。
だからそんな愚痴を聞かされても殴ることしか出来ないのよ。
だって、私とアンタは赤の他人なんですからね」



『赤の他人』

それを言った私も、それを聞いた南条セイヤも、ほぼ同時に目を丸くした。

初対面の人間には言ってはいけないワードの1つなのだから。

これで私達の縁も切れたことになる。



「……ははっ。
そーいうの、嫌いじゃないよ。
誰もそうやって叱ってくれないから、こんな大人になっちゃったんだもん。
僕みたいなのは誰にも何もあげられないし、何も与えてもらえないんだ」


「まだ言うか……
いい加減にしたら?そーいうのは、日記にでも書いときなよ」


「うん……書いとく。
カワイイ女の子にお説教されたってね」


「可愛いは余計。そういう冗談もあんまり好きじゃない」


「ふふ、あはは!うけるー!
君って、すごくオモシロイ人!
普通、今日会ったばっかの男にそこまで言う?」


「言っちゃうわよ。
ていうか、初対面の男を殴ったこともあるし」


「うっそ!それって、さっきの
ダーリンのこと!?」


「ダーリンじゃないけど、そう。さっきのキザな男をね」


「うっそー!バッカみたい!」


「ば……誰がバカよ、アンタこそ何様なワケ?」



「ん?南条セイヤ様」



「は……」




敵わない。この男には、あの変態よりも敵わないかもしれない。

と言うより、あんまり関わらない方がイイ部類の人間かもしれない。


 

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...