201 / 399
恋はさざ波に似て②
なんだ……先約がいるんだぁ
しおりを挟む「あ~あ、酒が足りないぞっと。
でも、もうココの売店閉まったか
らさ、コンビニで買って来てよ。
あ、コンビニと言ってもウチの近くのコンビニね。
学校の隣のね。頑張って行って、買ってきて。ハンサムさん」
ウチの近くの、学校の隣にあるコンビニといえば、ここ三ツ星旅館から車で2時間以上はかかることを百も承知で。
「はい、喜んで!
では、行って来ますね。
布団を敷いて待っていて下さい、僕の新妻よ」
ハンサムと言われたのがそれほどまでに嬉しかったのか、
千鶴はスキップをしながら襖まで飛んで行った。
……恐らくは、本気で地元のコンビニまで向かう気なのだろう。
南条セイヤや、隣の部屋で死にかけている(多分)総大くんなんかには目もくれず、
あっさりと部屋を出たのだから。
きっと、天にでも昇る心境なのだろう。花も飛ばしていたし。
その証拠に廊下から、いつか聞いたことのある『澪と僕のラララ』という歌が木霊してきた。
まあ、良かったよ。
機嫌も直ったみたいだし、
首も治ったみたいだし。
ああ、嵐が過ぎ去った。
出来ればこのまま戻って来て欲しく無いんだけど……それは無理な願いだろう。
ボケーッと、
阿呆の子供みたく天井に張り付いた照明を見つめた。
「どのくらいで
帰って来るかしらね」
今のが独り言だったのか、はたまた脳みその中で湧き上がった声なのか、それを確かめる前に私は青冷める。
恐らくは前者?
だって、今の台詞を誰かさんに
聞かれていたみたいだったから。
「ふぅ~ん」
「……!」
気の抜けたテノールの声が耳に突き刺さりギクリと体を揺らせば、傍らに南条セイヤの企んだ顔があった。
「なんだ……先約がいるんだぁ」
「ち、ちが……」
うおー!!何で口をモゴつかせているのだ私は!
今の感じだったら100パーセント照れ隠しじゃんかよ!
「かっわいいね、
まだ1ヶ月ってトコかな?」
「……まぁ、確かに会ってからそれくらい経つケド。
決してアナタが想像してるような間柄じゃないですから」
「あら~そんなコト言っちゃう?」
「?だったら何ですか」
「若い男女が旅館に2人だよ?
あのハンサムなダーリンの怒り狂った顔が目に浮かぶよねぇ」
その計算だと、傍でスヤスヤ眠っているレミさんと、隣室で腐敗臭撒き散らしている総大くんの存在は丸々無視なんですね、分かります。
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる