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恋はさざ波に似て②

酔いのせいにして恥ずかしさを隠す

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螺旋を描き始めた脳内でぼんやりとそう考えていると、身体が外気にさらけ出された南条セイヤが『くしゅん!』と可愛らしい(ワザとらしい)くしゃみをした。


「いちいち芝居がかった男ですね、忌々しい」


瞳をきつく歪ませた千鶴は、チッと舌を鳴らして私の元へ徐々に近寄ってくる。


「なによ、なんか、文句でもあ……ひっ、く」


ヤバイ、呂律が回らない上に、しゃっくり、が、止まらなぁ……うい。


「ああ……こんなに酔わされて……可哀想な澪」


さめざめと、まるで道端で泣きじゃくる孤児に救いの手を差し伸べるかのように、千鶴は私を抱き締めてきた。

また抱擁かよ。ハグかよ。
オマエはアメリカ人ですか。
畜生、馬鹿、死ね。

脳内で散々な悪口を言いながらも、私はすでに抵抗を諦めていた。

それが酔いのせいなのか、呆れのせいなのかは判断に苦しむが。


「さあ、早く戻りましょう。
一刻も早くこんな魔窟から出るべきです」


姫を魔物から救い出した王子の口ぶりで、千鶴は私の手を鷲掴みにした。

ていうか魔物はお前だ。
さっきの光景、まだ目に焼き付いているからね?

ていうか……ていうか、だ。

カッコ付けるなら、せむてこっちを向いて喋ってくれ。

首、曲がってるってば!


「え、まだ……飲むもん」


「……え?
あ、いや……それなら、別に良いのですけれど」


「?」


突然、千鶴は真っ赤な顔でどもり始めた。

素面のクセに、何を酔っ払ったフリをしているのか。

などとグルングルンの頭で思ってみたが、当の本人は困り顔で熱い溜め息を吐いている。

……首を右に曲げながら。


「へべれけの澪も……、なかなかそそりまぼほばぁ!!」


脊髄反射で拳が勝手にヤツの顎を狙っていた。

顎を強打されれば、誰だって体を反転させてグラリと地に這うモノだ。それは千鶴も同じく。

だけど、ヘラヘラ笑いながら床をナメクジのように這うだなんてコイツくらいだわ。

あ、今ので曲がりっぱなしだった首が治ればイイけどね。

 


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