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恋はさざ波に似て②
腐っても姉妹
しおりを挟む悪態を散々付きながらビールをガブガブ飲んでいると、じっとりとした視線に全身が絡まる。
「……アネゴ、いいんスか?」
「何が」
「分かってるんスよ……
ダンナとハネムーンに来てることくら……っ」
――ドカッ
「い、いったー!!
何するんスかぁ!?いきなり尻蹴るなんて!」
酔っ払った私の足蹴りを臀部に喰らった総大くんは、ショックのあまりにハイテンションになったようだ。
いつもより抑揚の効いた声を聞いてそう思ったのだ。
「……うるさいわねー。
静かにしてよ」
「むっ……
アネゴ、酒癖悪いッスよ」
お前は私のオカンか。
そう突っ込みたくなる保護者面で、総大くんは私の手から缶ビールを奪った。
「酔わなきゃやってられないって言い出したのは、総大くんじゃん」
「確かに言いましたけども……」
――グォォ
総大くんが言葉に詰まって口をモゴつかせていると、側で寝ていたレミさんの立派なイビキが割り込んできた。
「レミ……また腹出して。
風邪引いても知らないッスよ~」
メンバーに気を遣うアナタの姿が、私の目には美しく映ります。
でも、汚い腹をさらけ出して死んだように眠っているレミさんは、あんまり美しくありません。
総大くんは疲れたような溜め息を漏らしながらも、ムニャムニャと幸せそうに寝息を立てるレミさんに布団をかけ直す。
ついでにその横で体を投げ出している、南条セイヤにも布団を用意し始めた。
ホント、健気な人だよね。
総大くんって。
「アンタ、イイ嫁になるわ」
「あはは~冗談キツイッス。
オレが嫁に貰う方なんで」
「……誰がやると言った」
「え、アネゴの了承得ないといけないんスか?」
「やらんぞ」
「そんな頑固親父みたいなこと言わないで、妹さんを下さいな」
長ったらしい前髪に邪魔されて、表情から本心を汲み取れない。
総大くんって実は……
一番何考えているか分からない人、かもしれない。
「それを本人に言えないようなチキン野郎には、絶対あげない」
「さいですか……厳しいッスね」
「そんなことないわよ。
腐っても姉妹なんだし?
腐乱してようが血は繋がっているもの」
「……腐乱とか言いますか。
凪が聞いたら泣くッスよ?」
どちらから封を切ったのか、私達はつい笑ってしまった。
とりわけ可笑しかったワケじゃないけど。
……って総大くんと私のノリは、こんなもんか。
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