上 下
197 / 399
恋はさざ波に似て②

腐っても姉妹

しおりを挟む


悪態を散々付きながらビールをガブガブ飲んでいると、じっとりとした視線に全身が絡まる。


「……アネゴ、いいんスか?」


「何が」


「分かってるんスよ……
ダンナとハネムーンに来てることくら……っ」


――ドカッ


「い、いったー!!
何するんスかぁ!?いきなり尻蹴るなんて!」


酔っ払った私の足蹴りを臀部に喰らった総大くんは、ショックのあまりにハイテンションになったようだ。
いつもより抑揚の効いた声を聞いてそう思ったのだ。


「……うるさいわねー。
静かにしてよ」


「むっ……
アネゴ、酒癖悪いッスよ」


お前は私のオカンか。
そう突っ込みたくなる保護者面で、総大くんは私の手から缶ビールを奪った。


「酔わなきゃやってられないって言い出したのは、総大くんじゃん」


「確かに言いましたけども……」


――グォォ


総大くんが言葉に詰まって口をモゴつかせていると、側で寝ていたレミさんの立派なイビキが割り込んできた。


「レミ……また腹出して。
風邪引いても知らないッスよ~」


メンバーに気を遣うアナタの姿が、私の目には美しく映ります。

でも、汚い腹をさらけ出して死んだように眠っているレミさんは、あんまり美しくありません。


総大くんは疲れたような溜め息を漏らしながらも、ムニャムニャと幸せそうに寝息を立てるレミさんに布団をかけ直す。

ついでにその横で体を投げ出している、南条セイヤにも布団を用意し始めた。


ホント、健気な人だよね。
総大くんって。



「アンタ、イイ嫁になるわ」


「あはは~冗談キツイッス。
オレが嫁に貰う方なんで」


「……誰がやると言った」


「え、アネゴの了承得ないといけないんスか?」


「やらんぞ」


「そんな頑固親父みたいなこと言わないで、妹さんを下さいな」


長ったらしい前髪に邪魔されて、表情から本心を汲み取れない。

総大くんって実は……
一番何考えているか分からない人、かもしれない。



「それを本人に言えないようなチキン野郎には、絶対あげない」


「さいですか……厳しいッスね」


「そんなことないわよ。
腐っても姉妹なんだし?
腐乱してようが血は繋がっているもの」


「……腐乱とか言いますか。
凪が聞いたら泣くッスよ?」


どちらから封を切ったのか、私達はつい笑ってしまった。

とりわけ可笑しかったワケじゃないけど。

……って総大くんと私のノリは、こんなもんか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...