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恋はさざ波に似て②

バンドの打ち上げで

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「ほら、廊下は寒いんスから。
中入れて下さい」


「あ、いや、ちょ待っ」


あ~れ~。


総大くんに背中をグイグイ押され、ついに入室してしまった亜空間。

いいのだろうか。ファンでもない私がこんな、俗に言う『イイ想い』をしてしまって……。



「おーい、ビールは?」


「う~ぃ。買ってきたッスー」


「つまみはー……って、あれ?
凪ちゃんじゃーん?」


「ああ、紹介しますねぇ。
凪のお姐さんのアネゴ……あれ、本名なんでしたっけ?」


「……澪」


「みお姐さんッス~」


「……姐さんは余計」


「え!?お姉さん!?
え、え、凪ちゃんでしょー!?」


「双子なんス~」


「……どうも」


「双子ぉ!?」


ああ、遥か昔に飽きた。
このリアクションは。

ていうか。
何この、へヴィーメタルなメイクのお兄さん。

真っ白な顔に、真っ黒なアイメイク。
おまけに背中まで伸ばしたコケシみたいな髪の毛。
今時のヴィジュアル系は、もっと見目麗しいハズだ。

何年か時代を間違えたようなステージメイクをした(ライヴ終わってんのにクレンジングしないのだろうか)、いかにもロックバンドやってます!と全身で言い放つ男が、座布団を敷き詰めた床に横這いになって、私を凪に重ね凝視している。

恐怖を感じずにはいられない容貌だ。


「よろしくね~お姉さん。
オレはギターのレミ」


この『レミ』と名乗るバンドのメンバーは、黄ばんだ歯を見せながらニカリと笑った。

加えてバスドラムのようなドスの効いた声で挨拶をされたものだから、一瞬眩暈がした。

お願いだから『危険人物』と書かれたプレートを首から下げていて欲しいわ。


「レミは、『麗しい』に『魅力』で麗魅って書くんス。
あれ、最初の由来は『ドレミ』のレミだっけ?」


「ん~、どっちでも。
とりあえず、座ってよ!」


日常的に呪術を行っていそうな外見とは180度違い、気さくな雰囲気でレミさんは私を気遣ってくれた。
 
 
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