上 下
185 / 399
恋はさざ波に似て

背骨が軋まんばかりの抱擁

しおりを挟む


「じょ、冗談……ッス」


驚きのあまりに、何故か総大くんの口調になってしまった。



「や、止めて下さい!
その喋り方は!悪寒が走ります!大好きです!!」


どっちだー!

支離滅裂な愛の告白を受けながらも、ついに抱擁を素直に許してしまった。

だって、あまりにも可哀想だったからさ……泣かせちゃったし。



「ああ、もう、何てお茶目さんなんでしょう。
僕の愛を試したのですね。本当に可愛い人だ」


スリスリと頬擦りされながら、全身の骨が折れんばかりに抱き締められる。


「ははっ……どこまで都合のイイ思考回路なんだか……」


もう何度も経験したコイツの抱擁に身を委ね、渇いた笑いを漏らす。


「僕等はついに、障害を乗り越えたのですね」


千鶴は『あー』だとか『んー』だとかいう言葉を発しながら悶え始めた。

まるで猫にそうするようにもみくちゃにされる。


「どっちかと言えば、私に取ってはアンタ自体が障害かもね」


「そうですかそうですか。
ああ……愛しい人よ」


って、ナチュラルに聞き流されたよ。相変わらずムカつく。


「う……っ、てか、締め過ぎだ馬鹿!いい加減離れろっ」


「嫌です。
やっと捕まえた僕の幸せを、離さずにはいられません」


――ギチギチギチ……


「や、やめ……ほんと、キツイ……」


だ、誰かタオル投げて!
マジで締め……いや、絞め殺される!!


今の私達は絶対に、仮にも恋人同士の抱擁なんかしている図には見えないだろう。
プロレスのごとく体を締め付けられているんだから。

……何なの、コイツ。
これはお茶目で済まされる問題じゃない。
本能丸出し、まるで犬。

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...