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恋はさざ波に似て

冗談……? さすがの僕も参りますね

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「そう……。
でも、1番はセイヤだから。
アンタは……3番目」


「3番目!?2番目は誰ですか!
セカンドポジションすら奪う気ですか!」


え、今の怒るポイント?何か1番目を剥奪された時より激昂してるし。


「もー、何番でもイイけどアンタなんか最初から好きでもなんでもないしー。
もう付きまとわないでくれるぅ?」


ヤバイ……吹き出してしまいそうだ。





「そう……。そう、ですか………
………………………澪が他の誰かを想うのなら、僕はそれを奪うことは出来ません」



「……え、なに……」



突然、悪ノリしすぎてしまったという罪悪感が背中から降り注ぐ。


もしかして私は……物凄く純粋な人間を傷付けている真っ最中なのかもしれない。

仮に、コイツに今の冗談が伝わっていないとすれば。

私は……


あの日、克哉にされたコトと同じコトを千鶴にしている。


で、でも!
だからって……

本当に付き合っているワケでもないし。






「月並みな言葉で申し訳ありませんが、僕は本当に……澪が幸せならそれで……いいです」



あ、ヤバイ。

即座にそう思った。


だって、さっき私が殴ったばかりの頬に涙が光ったから。

綺麗に頬を伝って、それは雨のように床を叩いた。

その音が響く前に、千鶴はくるりと私に背を向ける。




「ッハ……女々しいったら、ないですね。
無様な姿を晒してすみません。
それでは」



「……え、待ってよ。
冗談でしょー?」



慌てて去ろうとした千鶴の腕を掴んでしまった。



「冗談……?
さすがの僕も参りますね」



「いや、ゴメン。私が冗談言ったの!悪かった、前言撤回っ」



「冗談……?
さすがの僕も参りますね」


え……同じ抑揚で同じ台詞言ったんですけど。


「だ、だからゴメンーって。
アンタがあんまり面白いから、つい悪ノリしたの!」


ひ!首だけこっち向いた!
目ぇかっ開いて、めっちゃ睨んでる!

これじゃまるで蛇に睨まれた蛙だ……。



「い、い、今の、じょじょじょ
冗談だったのですか?」


――ガクガクブルブル


なんて効果音が実際に聞こえるほどに、千鶴は全身をワナワナと震えさせた。

 
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