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恋はさざ波に似て
思い出してはいけない『誰か』がすぐそこまで…
しおりを挟む二の腕、胸部、腹部、太股。
いたるところに鬱血した斑模様が点々としている、私の体。
ああ、そうか。
確か……ぼんやりとしか覚えていないけど、小学校高学年に上がる前くらいにそんな体になった。
膝を抱えて、独りで泣いていた。
私は傷だらけだった。
どうして今の今まで忘れていたんだろう。
最近、変な夢に悩まされていたけど、このことだったのかなぁ。
思い出しちゃいけなかったのかもしれない。
きっと過去の幼い自分が、必死の想いで忘れようとしたから。
思い出せないようになったのかもしれない。
だけど、ああ。
南条セイヤのせいで思い出しちゃった。
大した思い入れも無い、芸能人という認識しかなかったのに……。
違う。きっと、あの歌のせい。
あの音のせい。歌詞のせい。
……違う。
もっと大きな存在。
もっと身近な誰かのせい。
思い出してはいけない『誰か』が、すぐそこまで近付いている……。
『お前が殺したんだ』
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