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恋はさざ波に似て
あの日、 君が恐れていた砂漠のように。
しおりを挟む『さざ波』と題するように、どこからともなく波が全身を包むような感覚に陥った。
私は無意識にもスピーカーから流れ出る音に集中し、瞼を閉じて甘ったるいその歌声に身を委ねてしまった。
『愛するあの人は もういない
取り残された僕
波にさらわれて
泡となって
霧となって
いずれ消えていくだろう
あの日 君が話してくれた
人魚のように』
テノールの、心地好い音程が私の頭を酔わせた。
音楽はずるい。
というか、この歌が。
さっきまでの喧騒が、嘘のように消えていくんだもの。
まさに泡となって消えていく。
『愛するあの人は もういない
立ち尽くした僕
波に飲まれて
藻屑となって
蒸発して
ああ 消えてしまった
あの日
君が恐れていた砂漠のように
干乾びてしまった
さざ波の憂鬱』
――ドクン
ふいに突き刺さった心臓の痛みに目眩がした。
心臓が瞬間的に大量の血液を吐き出したのだ。
頭に血が昇り、視界が真っ赤になる。
感動したとか、そんな類の現象じゃない。
視界が歪んでいく。
南条セイヤが、遠のいていく。
異変に気付いた畑野先生が私の体を支えてくれたけど、
足先が痺れて上手くバランスを取れなかった。
背中の真ん中が、酷く熱かった。
燃えるような熱が背中に宿る。
痛い……痛かった。
――ああ消えてしまった
あの日、
君が恐れていた砂漠のように
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