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恋はさざ波に似て

聴き憶えのある歌

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「え~と、今日はみんな『さざ波』聞きに来てくれたと思うんだけどー。その前にちょっと話させて?」


何を。


――はーい!!


はーい。分かった分かった。
どうぞ、話して頂戴な。


「今日、僕がここに来た理由なんだけど、みんな気になったでしょ~?何故この、三ツ星会館に僕が!?……って」


いちいち演技がかかったようなワザとらしい台詞回しがカンに障る。
どっかの誰かさんを彷彿とさせるよ。


「実はー、僕の本名も『南条セイヤ』ってんですけど、下の名前のセイヤがホントはカタカナじゃなくって。
星の夜って書いて『星夜』ってゆー漢字なんですよー。
んで、叔父が……あ、町長か。
ごめんごめーん!」


――ドッ


何故、今の話で会場が沸き上がるのか。理由を誰か教えて。

それと、ステージ横で自慢げにニヤけている町長の顔が腹立つ。


「あははっ、だから町長がぁー、僕の『星夜』にちなんで三ツ星会館とか三ツ星饅頭って付けたんだよねー」


はいはい。どうでもいい知識をどうもありがとう。

三ツ星会館に、三ツ星饅頭。
叔父に当たる町長が溺愛する星夜にちなんで付けた名産物が盛りだくさん、ってワケか。


「ってーワケで、三ツ星会館売店で売ってる『三ツ星饅頭』も僕だと思ってお土産によろしくねぇ~」


いい町おこしになるわ、こりゃ。




――セイヤー!歌ってー!


2時の方角辺りから一際甲高い声がそう叫んだのをきっかけに、俄かに『セイヤ』コールが場内を反響した。


「もー、みんなせっかちだねぇ。分かった、分かったよ!
聞かせちゃうから……。
今日は帰さないよ?」


――イヤァアアア!!!


イヤァー!
めちゃくちゃ鳥肌立った!
何故だろう……何故かこの手のキザなキャラは生理的に受け付けないわ。

突如襲ってきた悪寒に身震いする間も無く、ステージの左右に埋め込まれたスピーカーがイントロを流し始める。

どうせ流行りのポップな歌、いかにもアイドルが歌いそうな曲なんでしょ。



――あれ?



何だコレ。懐かしい……?


聞いたことの無いはずの歌が、歓声に混ざって私の両耳を刺激する。

イントロのサックスが、眠りを誘うようにゆったりと流れる。


……何でだろう、すごく落ち着く
 
 
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