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恋の矢印
どこだって天国
しおりを挟むするとヤツお得意の、予想外の発言が返ってきた。
「貴女は馬鹿です。
本当にお馬鹿さんだ。」
「‥‥なっ。」
「僕がいつ、同情だとか上辺だとか、口にしました?
澪の言うことが子供みたいだとか、馬鹿にしました?」
真剣な瞳。諭すような瞳。
いつもこの瞳の前では
何も言い返せない。
千鶴は、大人だから。
私は、子供だから‥‥。
「今さっき、馬鹿って言ったじゃん。」
ほら、こんな風にしか答えられない。
イヤになる。
そして千鶴がふぅっと細い溜め息をつけば、尚更その想いが助長される。
地獄だとか何だとか、
どうせ私の言うコトは子供染みている。
「その馬鹿とは違います‥‥。
可愛いお馬鹿さん、という意味です。
僕は1度たりとも、貴女を愚かな馬鹿だと思ったことはありませんからね。」
だけど千鶴は、瞳を和らげてそんなコトを言ってきた。
「地獄の果て?
そんなの言わずもがなですよ。
どこへだって着いて行きますから。
貴女が蜘蛛の糸に掴まって、
上へ行こうとしたら僕もまた、
その糸に掴まります。
勿論、下から邪魔してくる愚か者共を蹴散らしてね。」
―その先が、地獄だとしても
「糸が切れたら?」
―恋だの愛だのに狂った人間は
「そしたらまた、2人で地獄を楽しみましょう?
それに‥‥澪と一緒にいられるのなら‥‥地獄も僕に取っては天国と何ら変わりありませんよ。
だから地獄は修羅場の例えにもならない。
貴女が傍に居るのなら、どこだって天国です。」
―どうしてこうも、馬鹿になれるのだろうか
そう。本当に何も分かっていなかったのだ、私は。
千鶴はこんなにも私を分かっているというのに。
何て澄んだ、
濁りの無い瞳だろうか。
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