Shadow★Man~変態イケメン御曹司に溺愛(ストーカー)されました～

恋の矢印

床に寝そべって

人がさっきまで色々と真面目に悩み腐っていたというのに、
この男はどうしてこうも、ポジティブなのだろう。


そう思うと、何だか自分が馬鹿らしくなってきて。
私は靴を脱がないまま床に寝そべった。



「‥‥アホらし。」


「澪、そんなところで寝たら風邪引きますよ？
これは添い寝をしなければ大変です！」


―ボグッ


恒例の正拳突きを千鶴の腹にかませる。


「ぐ‥‥恥ずかしがり屋さんの澪は、今日も僕に愛の裁きを‥‥
下すのですね。」


腹抱えて何を口走っている。


「アーホ。」


「さっきから阿呆阿呆言って‥‥どうしたと言うのです？」


千鶴はしゃがみ込むと、フローリングの床に寝そべる私を困ったような顔で見下ろした。


「べっつに。
ただ、あんまりにもアンタがアホだから、色んなコトがどーでも良くなっちゃった。」


「また阿呆と言いました‥‥‥‥‥‥泣きますよ？」


「泣けば？」


「‥‥‥‥。」


「おい。」


再び両手で顔を隠しながら泣きに入った千鶴が、本気で笑えた。

スーツを着た立派な大人が、
どうしてこんな滑稽な姿で百面相を繰り返すのだろう。


私はさっき総大くんと公園で話していた内容を思い出してみた。



『どうして心はこんなに複雑に絡んでしまったのだろう』


『どうして人は成長すると、謎解きに自ら嵌ってしまうのだろう』



―何で子供は大人になってしまうのだろう



手を繋いで歩いて行った、
男の子と女の子。

その子達もいずれは、大人になって。

繋いだ手の温もりさえも
忘れていくんだろうな。


私みたいに‥‥。



『克哉』