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恋の矢印

馬に蹴られて死ねばいいです。

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私と総大くんを挟む、巨大な滑り台に被さった雪が先刻よりも明らかに量を増していた。


ていうか、こんな人生規模の話なんかしている内に
すっかり忘れてたけどさぁ‥‥



寒い!!!!



「ぶぇーっくしょーい!」


総大くんの親父もビックリな大きなクシャミで思い出した。

今は2月の真冬なのだ。



「ねぇ、そろそろ帰らない?
さむ~。」


「そ、そッスね‥‥
ああ、指の感覚が無いぃ。」



2人そろって馬鹿みたいに顔を真っ赤にさせ、背を丸くさせながらマンションへ小走りで向かった。




―ガチャ



ドアを開ければ暖房の暖かい空気が全身を包んで、私は思わず猫みたいな声を上げた。


「はぁ~~あったかぁい。」


「風邪引かなきゃいいッスけどね。」


2人で頭に積もった雪を玄関で払っていると、屍のような男が恨めしそうな顔をして立っていた。



「ま~つ~し~ま~そ~う~だ~い~。」


「ハッ‥‥だ、だ、ダンナ様‥‥ッ!!」


帰ってくる時から寒さでかなり震えていた総大くんだったが、
千鶴の『恨めしや』と言わんばかりの声を聞いて余計にガタガタ全身を揺らした。

霜焼けの真っ赤な顔が、みるみる内にパープルに。

そんな総大くんの怯え様をよそに、私はニヤける。

だって、この2人のやり取りが面白いんだもの。


「貴方って男は‥‥馬に蹴られて死ねばいいです。」


「す、すみませんすみません!
ホントすみません!」


千鶴は目を最大限に見開き、巨漢の総大くんを見下ろすようにすごんだ。

綺麗な顔立ちが怒りに歪むと、
何故か余計に綺麗に見える。
 



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