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恋の矢印
どうしたら満足できる?
しおりを挟む「も~、アネゴったら‥‥。
何か、そういうSっ気なところとかダンナに似てますよねぇ。」
‥‥っはぁ~。
諦めたような溜め息を喉で鳴らした総大くんが、
『トホホ』と加えて呟いた。
トホホって‥‥実際に口にする人、初めて見たわ。
「あんなヤツと、似てるなんて言わないでよ!
それがちっぽけな箇所でも虫唾が走るっつーの!」
「はぁ。」
「はぁ、じゃなくて!イヤなの!そーいうの。誰かに似てるとか、そーいうの、イヤなの。」
何でこの会話の流れで逆上するのか、自分でも意味が分からない。
‥‥いや、分かっているんだ
本当は。
あまりのみっともなさに、爪が軽く手の平に食い込んだ。
私の『誰かと比較されるのが嫌』という発言のルーツは、
確実に凪にある。
自らのコンプレックスを露呈したのも同然。
眉根を寄せながら呼吸を乱している私を、総大くんは長ったらしい前髪の隙間から遠慮がちに見つめてきた。
「‥‥すんません。
デリカシーなくって。」
ボソリとした言葉が空気に響いた。
辺りはシーンと静まり返っている。
しばらくすると
鐘の音どこからか聞こえてきて、子供を家に帰そうと鳴り響く。
その音は躍起に鳴っているようにも聞こえるし、
そうじゃないようにも聞こえる。
曖昧。
目の前にいるこの人も、何だかよく分からない。
だけど‥‥結局のトコロ、
よく分からないのは私自身だ。
何が気に食わないんだろう。
何だったら、
満足出来るのだろう。
どうしたら、
満足に、穏やかになれる?
――心の底から
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