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恋の矢印

公園での雑談

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そんなダラダラとした問答を繰り返している内に、どちらから入ろうと言ったワケでもなく、いつの間にか公園の中の滑り台のある場所に私達はいた。

総大くんは雪に埋もれた遊具の、象の鼻のような曲線を描く台の部分をポスポスと叩く。

ベビーパウダーみたいな粉雪が
渇いた空気に舞った。



「鴨、ねぇ~。
いや、オレ、ホントに淡白なんスよ。
こと自分の恋愛に関してはね。
だから、そこまで執着が無いから、曖昧なことばっかなのかも。」



お。

何がきっかけだったのか、急に総大くんが饒舌に話し出した。
まるで雑誌のインタビューの受け答えのごとく。



「‥‥でも、ああ。レンアイだけじゃないかもねぇ~。
オレのプライベートは全部、曖昧で宙ぶらりんのようなモンですわ。仕事以外のことになると、
どーしても適当で良しとしちゃうんで。うん。」


「仕事以外、ねぇ‥‥。
でも、男の人って大抵そんな傾向にあるんじゃないの?
恋愛なんかは結局、二の次って感じで。」


「ヤケに理解してるんスね。
大体女の子って、『仕事とアタシとどっちが大事なの~!』ってなるじゃないッスか?」


私は誰と何を話しているのかも、段々分からなくなってきた。

何となく、この手の話になると流れに身を委ねてしまうのだ。


「まぁね。
だけど、男と女ってそもそもが違うじゃない。
会話する時に働く脳の回路とか‥‥女は話を聞いてもらいたいから話をするケド、男は何でも結論を求めたがるから女の話を聞いても
『だから、どうしたいの?』ってなるでしょ。」


「で、『もーイイ!分かってもらえないなら!』って。」


「あはははっ。凪、言いそー。」


「言いますね~。
まぁ、そんなところすら可愛いと想えるんだけど。」



悩ましげな溜め息をつきながら吐かれたその台詞に、思わず心臓が暴れる。



『そんなところが可愛いです』



ああ。

こんな台詞を聞いたことが
あるような無いような‥‥


何でこんな時まで頭の中に居座るんだ、この変態。


脳裏にまでチラついて、休む暇も無いじゃない。馬鹿。
 
 
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