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恋の矢印

コンビニで煙草を買いながら

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「それより煙草、買いに行くんでしょ?ほら、早く行こう!」


慌てふためきながら千鶴の亡骸を一生懸命つついている可哀想な総大くんの袖をグイグイと引っ張り、一刻も早く変態のいないコンビニへ行こうと催促する。

その結果、散歩を嫌がる大型犬と、しゃにむにリードを引っ張る飼い主のような構図になった。


「え、あ、ハイ‥‥!」


泥臭そうな汗臭そうな、いかにも男臭い総大くんの容姿からは想像もつかない、俗に言う
『やられキャラ』の必死なオーラ。

そして決して抵抗出来ない性分故、コンビニへ連行されるのである。





2月の夕暮れは瞬きもしない内に、一気に夕闇のビロードに包まれた。

私と総大くんは学校前のコンビニでそれぞれ煙草を買い、
そして来た道を歩いた。

千鶴がいなければ急に借りてきた猫のごとく大人しくなる総大くん。

マンションを出た瞬間には、無口な朴念仁にスイッチが切り替わったのだ。


しかし帰り道、公園の前で突然口を開いた。



「‥‥あの~、アネゴォ‥‥。」


「んー?」


ていうかその『アネゴ』呼ばわりは、定着なのだろうか?
まぁ、『姐さん』よりはマシだけど。


「あの~、アネゴにこんなこと話すのもアレなんスけど~‥‥。」


電柱のようにひょろりと長い男が、もじもじと喋る。


「アレって?てか、ごにょごにょ喋らないでハッキリ口を動かしたら?」


「あ、ハイ‥‥。
いや、あのですね。‥‥凪、のことなんです。」


「‥‥凪ぃ?」


その固有名詞が耳に飛び込んで来た段階で、これが何のジャンルの相談なのかは予想出来た。


「何、ウチのアホがどうかした?」


「アホって‥‥ハハ‥‥。いや‥‥最近、凪‥‥元気ッスか?」


「は?」


元気?と聞かれれば、あの脳天カラッポは元気100パーセント!頭のスペアはご無用!って感じの、パン工場いらずな元気娘だけど(それが病気の時でもね)。

バタバタ走る私の心配も仇になるくらい前向きなヤツだけど。

そんなの、かえって身内の私よりかは彼氏の方が知ってるんじゃないのか?
ていうか、最近総大くんと会ってたんじゃなかったのか?


‥‥などと、いっぺんに思考をあれこれ巡らせるよりは本人に聞いてしまえば早いコト。
 
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