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恋の矢印

腐乱したゾンビのように

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まるでゾンビだ。
きっと腐乱している。

吐き気に襲われ、無意識に両手で顔を覆った。

額に手が当たる。

額が、熱かった。



『澪が、他の誰かをずっと見ていて』


―言わないで



『僕なんか眼中に無いことくらい‥‥』


―やめて、聞きたくない



『それでも‥‥
尚更、貴女が愛しく想える僕は‥‥何なんでしょう?』



雨宮先生が好きな克哉のことが好きだった私は、

私は‥‥何なんだろう。


ふいに、あの時の洗い立てのワイシャツの匂いが鼻孔を通して、脳裏に蘇る。



―千鶴も同じ気持ちだったら、
どうしよう



そればかりが気がかりで、私はいつもの調子を取り戻せずにいた。




「お姉~!」


トイレから出た私を待ち受けていたのは、この世で最も馴染みのある顔だった。


「ああ‥‥珍しいじゃない。
学校で話しかけてくるなんて。」


「えぇ~?ホントは毎日、お姉に会いに来たいよぉ!?」


すっかり風邪も回復し、凪はいつもの能天気なフワフワ頭に戻っていた。


「ハイハイ。で?」


そして私の機嫌を伺うように話しかける時は、決まって後ろめたいことがある時だ。


「えーと‥‥今日、また泊まりだからヨロシク~。」


ほら、目が泳いでる。

私はその浮かれた妹の姿を見ながら、いつの間にか虚ろな目をしていたらしい。

その後凪が
『お姉、何かお化けみたいな顔してるよ』と教えてくれたので、咄嗟に平常心を装った。
 
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