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恋の忘れ形見③

ウサギのように寂しいと死んでしまう変態

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「‥‥何の用だ。」


開口一番コレ。
とても彼氏に言うような台詞じゃないでしょ?先生。


「澪‥‥いつになったら帰ってくるんですか?」


するとメソメソとぐずったような男の低い声。


「甘えるんじゃねーわよ!
私がいつ帰ったってイイでしょ、全く。」


「嫌です。一刻も早く帰って来て下さい。
寂しすぎて死んでしまいますよ。
ああ、まるでウサギのような僕‥‥。」


―ブツッ


重低音の声を耳に響かせたまま、私は通話終了ボタンを潔く押した。

携帯の充電が勿体無いじゃない?

ニッコリ微笑むなり、私はそう思った。



―ブーッブーッブーッ‥‥!


「ッチ‥‥!」


さっきよりも勢いを増した振動に苛立ちが募った。

私は研究室のドア前から離れ、廊下の端までドスドスと歩いた。

そして通話ボタンを押すなり、携帯に向かって怒鳴り付けるのだった。


「ちょっと!!しつこいわよ!!この、馬鹿!!」


「馬鹿じゃないです。
というか、いきなり切るなんて酷くないですか?
澪だから許せるものの、他の人間だったら八つ裂きものですよ‥‥全く。」


いや、今サラリとムゴイこと言ったよね?


「あーハイハイ。
だったら八つ裂きにすりゃイイじゃん!私のこと。」


「‥‥!み、澪!
何てことを口にするんですか!
はしたないですよ。」


え、今‥‥私何かはしたないこと言った?

鼓膜に直接響いてくる千鶴の少し怒ったような声を聞きながら、疑問に思った。


「‥‥いや、アンタが言い始めたんじゃん。八つ裂き。」


「フゥ‥‥やれやれ。
反抗期とやらですか?
澪は思春期真っ只中ですね。」


Oh,come on!と言いたげなその口調に、私は冷静にキレた。


「万年脳内春の人に言われたくないわ。」


「え、何ですか?よく聞こえません。」


その後に『電波が悪いんですかね』と、千鶴はとぼけた。

おいおい、今度は聞こえないフリですか。新しいな。

そう思いつつ、拉致の明かないヤツの返答にどんな罵声を浴びせてやろうかと考えていた時だった。
 

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