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恋の忘れ形見③
変態からの着信
しおりを挟む「捕まえられ‥‥うーん。
例えるならそっちの方が合ってるかも‥‥。」
「あーあ。ノロケですかー?」
「いや、ノロケてません。」
つまらなさそうな顔をする先生にキッパリと断言した。
「え~?ノロケてないの~?」
「ノロケてません。」
「なんだ~。」
「なんだ~と、言われても。」
フンッと鼻を鳴らしながら紅茶をすすった。
先生は口をとがらせながら首を傾げている。
何か‥‥ホントつかめない、この人。
「‥‥でも、後悔だけはしないようにねぇ?」
「え?」
すると先生は、急に顔色を変えて声のトーンを落とした。
「男って、勝手だから。」
「はぁ‥‥まぁ。」
「逃げたり、迫ってきたり。」
「‥‥はい。」
妙に説得力のある口調に私は聞き入ってしまった。
歳が歳なだけに、先生も相当苦労されたのだろう。
そうして『恋とは何か?』という先生独自の哲学を、軽く30分は述べられた時だった。
―ブーッブーッブーッ‥‥
ポケットに入れていた私の携帯が揺れた。
何故か身に覚えのある嫌な予感に胸が踊る。
私はバイブを無視して先生の話に相槌した。
「ミオちゃん?鳴ってるわよ、彼氏から。」
ニヤリと笑う先生。
何故バレた?
じゃなくて彼氏じゃねーよ!
と、脳内ノリツッコミしつつも私は遠慮がちに言った。
「いや、いいんです。」
「良くないわ。早く出なさいよ!可哀想でしょー?」
いや、可哀想なのは私だよ!
「ハハ‥‥いいんですってば。」
「ダメー!!
そんなんじゃダメだってばぁ!」
キィー!!と可愛らしくわめき始めた先生に気迫負けすると、私は未だ震え続けている携帯を手に取った。
「ああ‥‥じゃあ、廊下行って来ます(せめて)。」
「うんっ。
よしよし、行って来なさい。」
ニコニコと手を振る先生を残し、私は蛍光灯で白く照らされた廊下に出ると通話ボタンを押した。
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