上 下
130 / 399
恋の忘れ形見③

変態からの着信

しおりを挟む


「捕まえられ‥‥うーん。
例えるならそっちの方が合ってるかも‥‥。」


「あーあ。ノロケですかー?」


「いや、ノロケてません。」


つまらなさそうな顔をする先生にキッパリと断言した。


「え~?ノロケてないの~?」


「ノロケてません。」


「なんだ~。」


「なんだ~と、言われても。」


フンッと鼻を鳴らしながら紅茶をすすった。
先生は口をとがらせながら首を傾げている。

何か‥‥ホントつかめない、この人。



「‥‥でも、後悔だけはしないようにねぇ?」


「え?」


すると先生は、急に顔色を変えて声のトーンを落とした。


「男って、勝手だから。」


「はぁ‥‥まぁ。」


「逃げたり、迫ってきたり。」


「‥‥はい。」


妙に説得力のある口調に私は聞き入ってしまった。

歳が歳なだけに、先生も相当苦労されたのだろう。


そうして『恋とは何か?』という先生独自の哲学を、軽く30分は述べられた時だった。



―ブーッブーッブーッ‥‥


ポケットに入れていた私の携帯が揺れた。

何故か身に覚えのある嫌な予感に胸が踊る。

私はバイブを無視して先生の話に相槌した。


「ミオちゃん?鳴ってるわよ、彼氏から。」


ニヤリと笑う先生。

何故バレた?
じゃなくて彼氏じゃねーよ!

と、脳内ノリツッコミしつつも私は遠慮がちに言った。


「いや、いいんです。」


「良くないわ。早く出なさいよ!可哀想でしょー?」


いや、可哀想なのは私だよ!


「ハハ‥‥いいんですってば。」


「ダメー!!
そんなんじゃダメだってばぁ!」


キィー!!と可愛らしくわめき始めた先生に気迫負けすると、私は未だ震え続けている携帯を手に取った。


「ああ‥‥じゃあ、廊下行って来ます(せめて)。」


「うんっ。
よしよし、行って来なさい。」


ニコニコと手を振る先生を残し、私は蛍光灯で白く照らされた廊下に出ると通話ボタンを押した。
 
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

夜の公園、誰かが喘いでる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:5

独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:369pt お気に入り:43

悪役令嬢は平民(?)と無双する

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1,191

ハイスペックでヤバい同期

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:25

さよなら私のドッペルゲンガー

青春 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:195

強欲ババァから美少女になったけど、煩悩なんて消せません

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

黒騎士物語

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

処理中です...