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恋の忘れ形見③

先生との恋バナ

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「いや、だってまだ若いでしょう先生。」


テンションの高い彼女に少々ウンザリ気味になりながら、決め付けるように言った。

だって現に彼女はまだ、歳のことで悩むような年齢ではないと思ったからだ。

両手に有り余るチャンスが、見え隠れしている。



「も~!またまたぁ。そんなことないって。
私、今年で40だしね。」


「よ、よんじゅうー!?」


「あ、失礼だぞ。オバサンだって言いたいんでしょー?」


いやいやいや。
マイナス12歳の間違いじゃないのか?

私はそう思うと、まじまじと先生の顔を凝視した。

‥‥とてもじゃないが40に見えない美貌だ。シミもシワも何ひとつ無い透き通った肌。相変わらず綺麗な人である。


「いや、もっとお若いんだとばかり‥‥。」


「ミオちゃんは優しいね~。
ありがとう。」


嫌味を含んだような物言いだ。


「いやいや、お世辞とかじゃないですよ?
先生、自分の顔とか鏡で見てるでしょ?
もっと自信持って下さいよ。」


「えぇ~?」


いや、えぇ~とか言われても嫌味にしか聞こえないよ。
そんなモデル顔でコンプレックスとかさ。

喉元でそんな台詞がつっかえた。


「そういえば、ミオちゃんこそ。見たわよ?例の彼氏!」


え、見た?
何を?アレをか?どこで?
まさかこの前、ヤツが学校に来た時か?

ていうか例の彼氏って‥‥そんな話題持ち出したこと、ありませんから!

脳内でグルグル渦巻くツッコミの嵐。


「か、彼氏なんていませんしね~‥‥アハハ。」


「とぼけたって、ム・ダ。
何あの超美形!どこで捕まえたの?ん~?」


先生はマネキンのような顔をズズイと近付けて、尋問を始めた。


「だから捕まえてないですってば!」


「あ、じゃあ捕まえられたの?」


ニヤニヤ。
恋バナ特有のニヤケ顔。
 
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