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恋の忘れ形見③

学校の宿題データまで盗む変態

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「ま、マジで!?本当に!?」


「マジですよ。」


私が言った言葉に、至って穏やかかつ上品に返す千鶴。



「‥‥ん?」


そしてふと、とある疑問に気付くとマヌケな音を口から漏らす。

千鶴は、私が紛失したはずのUSBをどこで入手したのか。

まぁ、返ってくる答えは大体見当付くけどね‥‥。


「アンタ‥‥提出したって言うけど、肝心なデータはどうしたのよ?」


「ああ、それならご安心を。
先日いただいたUSBの内容を、そのままプリントアウトしました。
中身に関しては、一切手を加えていませんから。」


『ね?』っと、私に確認を取るようにそう言ってきた。


「文章の末尾に提出期限と提出場所が記載されていたので、澪の寝顔を拝見した後に提出しましたよ。」


至極分かりやすい説明を、どうもありがとう変態。

要はUSBを盗んで勝手に印刷して、ご丁寧にも提出してくれたってことだろ?

‥‥プライバシーの侵害もイイトコだ。


青筋を額に浮かべてそう思ったが、一応の恩人に対して殴ることは止めた。

その代わりに、怒りを映した目で威嚇してやった。


「そう‥‥ありがとう。」


「いいえ、澪の為ですから。」


この変態に尻尾があれば、間違いなくブンブン振っているような嬉しそうな顔で私を見つめてそう言い返す。


ともあれ、無事に期限内に提出できたので胸を撫で下ろした私だった。

しかし、その後すぐに凪のレポートが未提出だという事実に気付く。


「あ、私凪のレポートも提出しなきゃならないんだった。
ちょっと学校行ってくる!」


「僕も行きます。」


部屋のドアの方へ駆け出した私の手を握り、千鶴はニコニコしながら言った。


「い・や・だ。」


絶対に嫌だ。
コイツと学校だけは一緒に行きたくないもの。


「‥‥そうですか。
では、大人しく愛の巣で待っていますね。」


ションボリしたかと思えば、即座に明るい表情に切り替わる。

ポジティブな野郎だとつくづく思うよ。


「愛の巣じゃねーでしょ。私の家だっつーの。
じゃ、凪のこと頼んだわよ?」


そこらの泥棒よりも数倍タチの悪い変態にそう言い任せるのは、非常に危険な行為だ。

だけど無意識にそう頼んでしまった自分に、いささか疑問を抱きつつも訂正はしなかったのだ。


それが何故なのかは分からないけど。



「はい。気を付けて下さいね。」



千鶴は笑顔で私を見送ってくれた。


 
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