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恋の忘れ形見②
広がる妄想
しおりを挟むここから1番近いコンビニは学校のすぐ隣にあるので、最低でも徒歩3分はかかる。
私はその間、また考え事をしていた。
まぁ、主に何日か前に凪が言ったことについてだ。
『千鶴さん、
私がもらっちゃおーっと』
一体、あの発言は何だったんだろう‥‥。
先ほど葵くんを猫っ可愛がりする様子を見て、そう思った。
千鶴なんか目もくれずにああだもんなぁ。
私がもらっちゃおう発言は、冗談だったのだろうか?
いや、冗談でも人の彼氏を取るような発言はしないヤツだ。
ああ見えても。
って、‥‥彼氏!?
いやいや、彼氏じゃないわよ!
やだな~私。ついつい脳内でノリツッコミしちゃったわ。
それにしても、何なんだろう。
本気の発言には聞こえなかったし‥‥。
とりあえず、違和感を感じたのは確かだ。
ま、大方私にカマかけるために吐いた言葉だろうけど。
私はそう結論を出すと、コンビニに入った。
夕方のこの時間帯、いつもなら学生であふれ返っているこのコンビニだが、今日は客足がまばらだ。
私は煙草を買うついでに雑誌を立ち読みした。
出来れば、アイツが帰るまでここで立ち読みしていたい。
そんなことを思いながらファッション誌を睨んだ。
誌面はすっかり春色で、知らず知らずの内に頭の中もピンクに染まっていく。
それを誘うのはパステルカラーの服を身にまとう、笑顔のモデル達。
万人に愛されるような可愛い容姿。白い肌。長い足。
何か、雑誌を読むだけで香水のイイ香りまで伝わってきそうだ。
世のモテる女性というのは、この紙の上で笑っている彼女達のような女性だ。
愛らしい笑顔で元気がイイ。
まぁ、多少は計算混じりの偽りもあるだろうけど、その小悪魔っぽいところもまた、男に取ってみれば魅力的に映るのだろう。
本来なら‥‥
あの嘘みたいに容姿端麗な変態は、こんな美女なんか選び放題で、よりどりみどりなんだろうな。
そして女の方も千鶴を取り合って、激しい競争に勝ち残るのに必死なのだ。
しかしそこで現れるのが、ヤツの婚約者。美人の令嬢。生まれも育ちも良い、金持ちのサラブレッド。
千鶴を狙っていた幾多の女達に、枕を濡らす日々が訪れるのであった‥‥。
‥‥ああ、妄想ばかりが広がっていく。
それだけ、未だにアイツのことを信用してないって証拠よね。
ハァ‥‥。
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