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恋の忘れ形見②

ヤキモチ

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「ふぅーん‥‥。
ヤキモチ妬いてるんだ?」


葵くんが私の肩越しで突如そんなことを言い出したもんだから、私は慌ててしまった。


「あ、葵くん。こんなヤツ相手にしない方が‥‥ね?」


そうだ。あまりこの変態を刺激しない方がイイ。

そう思いながら引きつり笑いを浮かべた私は、おそるおそる千鶴の方へと目をやる。


‥‥あ、何か怒ってる。



「大人をからかわないで下さい。」


目をつぶりながらフイッと明後日の方へと顔を背ける千鶴。

しっかし、大人気ないわよね。

ていうか葵くんは、いつまで私の後ろに引っ付いているのかしら?

そんなことを思いながら溜め息をついて、後ろを振り向こうとした時だった。


フワリと学ランの黒い袖に後ろから包まれた。



「‥‥え、ちょっと、葵くん?」


私は状況を理解出来ずにそう言うと、首回りを抱き締めてきた葵くんの腕を叩いた。
しかし葵くんはそれを無視し、再び千鶴を挑発した。


「あっそ。
それじゃ口出ししないでよね。」


「あ、葵くん‥‥。さっき玄関で『大人気なかったよ』って謝ったばっかりでしょ?」


千鶴を刺激するようなことを言うのは止めなさい、という意味を込めてそう言ったのだが彼はしらけ顔で私を見下ろし、生意気に言い返してきた。


「だって俺、大人じゃないもん。」


なっ‥‥!
さっきと言ってるかことが違うんですけど。
ていうかまるで別人‥‥?


葵くんの豹変ぶりに、開いた口が塞がらない。



「‥‥‥‥ろす。」


すると千鶴が眉間に皺を寄せながら何かブツブツぼやき始めたので、私は無意識に耳をすませた。


―ブツブツ‥‥


何か時折、『このクソガキ』だの『殺す』だの聞こえてくるんだけど‥‥気のせいよね?

でも、この変態‥‥怒ったら何かしでかしそうで恐い。


そう思案すると、言い争いを制裁しようと試みた。
私は葵くんの腕を掴みながら忠告する。


「‥‥葵くん?
このオジサン、怒らせたら恐いかも‥‥多分。」
 
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