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恋の忘れ形見②

突然の来訪

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「‥‥雨宮と喋ったの!?」


ポカンと口を開ける凪。

そういえば、雨宮先生のこと嫌いとか何とか‥‥カスミが言っていたわね。


「そうだけど。
イイ先生じゃない。何がそんなに気に入らないんだか、全く分からないわよ。
まぁ確かに、講義中は冷たい感じがするけどさぁ。」


「ハァ~‥‥。
お姉は雨宮のこと、よく知らないからそんなことが言えるんだよ。
嫌味だし、ウチらに無関心だしね。」


凪が仰向けになりながら先生の愚痴をブツブツ呟くもんだから、私は顔をしかめてしまった。


「話してみたら?話さないから本当の性格も分からないのよ。
私はサバサバしてて好きだけどなぁ。」


私がそう言うと、凪は口を尖らせてムスッとした。


「話したくもないよ。男グセ悪いって噂、知らないの?」


そう言った後、凪は布団の中に潜ってしまい、私は1人ポツンとベッド脇に放置された。


「はぁ~、何なのよ一体‥‥。」


ワケが分からない。
噂で人の人格決めつけるの?

私は布団を一瞥すると、溜め息をついた。



―ピンポーン



その時鳴ったチャイムが、後味悪い空気を一掃した。


「誰だろ‥‥?はぁ~い!」


私は雨宮先生の件から頭を切り替え、玄関へ向かった。


新聞のお金なら払ったし、加奈子かな?



―ガチャ


鍵とチェーンを解き、不用心にもそのまま勢い良くドアを開けた。

その瞬間、玄関前で立っている人物に驚くのであった。



「あ、葵くん!?」


学ランを着た美少年が目を逸らしながら、私の目の前に立っていた。
手には学生鞄と、青い袋が握られている。


「‥‥これ。」


「‥‥え?」


その青い袋を私の顔に突きつけると、葵くんは照れ臭そうにして喋った。


「‥‥この前借りた、パーカーとジャージ。
洗濯したから‥‥返す。」


「ああ、すっかり忘れてた。
ありがとうね、わざわざ。
学校帰りなの?」


「‥‥うん。」


葵くんは下を向いたまま、もどかしそうに眉間に皺を寄せている。

頬がうっすらと赤い。

 
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