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恋の忘れ形見②

惹かれる

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だって私と凪を明確に見分けられる人なんて、先生とアイツくらいだもの‥‥。

昨晩の千鶴との会話を思い出しながら、先生が煙草を吸う姿を見つめた。



「あ!ねぇねぇ。」


「何ですか?」


先生は突然そう言うと、テーブルの上に置いていた私の煙草を手に取った。


「ほら、私と同じの。
煙草、同じの吸ってるのねぇ。」


「あ、ホントだ。」


先生は私と煙草の箱を交互に見つめ、『煙草の銘柄が同じ』という些細なことに対して嬉しそうにニコニコしている。

その様子を見て、何だか無邪気で可愛らしいと思えたのだった。


「女で吸ってる人あまりいませんもんね、その煙草。」


「あ、君もそう思う?
そうなのよ~。私もね、1度もこの煙草を吸う女の子を見たことが無かったのよ。」


この人、ホントに人懐っこくて可愛いなぁ。
何か、珍しく気を抜いて話せる人かも。
‥‥って、この人先生だった。

私はその事実を忘れてしまうほどに、雨宮先生に惹かれてしまった。


「スゴイわねぇ。奇遇よねぇ。
ねぇ‥‥私、何だか土屋さんとはイイ友達になれそう。」


「え!?」


私は一瞬、耳を疑ってしまった。
今、友達って言った?

そう唖然としながら目を丸くしていると、先生はいきなり吹き出すようにして笑った。



「アハハ、ゴメンね。私ったら。
でも、土屋さんイイ人ね。
妹の為に、わざわざ外見まで似せて講義に出るんだもの。」


「あ、いえ。ただアイツのワガママに押されたって言うか‥‥、
土下座までされたんで。」


「土下座?
あの土屋さんが土下座したの?
‥‥って、2人共『土屋さん』じゃ紛らわしいわね。
ねぇ、君は下の名前何て言うの?」


先生は顔を私の顔に近付けさせて、ハキハキと尋ねてきた。

何か‥‥アメリカ人みたいな人だ。

目を見つめながら逸らすことなく喋り続ける先生を見て、私はそう思った。



「‥‥澪です。」


「‥‥ミオちゃんかぁ。
なかなかイイ名前ね。
おっと!私、会議があるんだった。それじゃ、またね。」


そう言うなり、雨宮先生はバタバタと走りながら喫煙所から出て行ってしまった。

嵐みたいな人だったなぁ‥‥。

緊張の余韻を残した胸をドキドキさせながら、私は煙草に火を点けた。

 
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