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恋の忘れ形見②

奇妙な夢

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「‥‥ん~。」


低血圧の体に血液を送り込むようにして、私は机の上で伸びをした。


講義中に、うっかり居眠りをしていたようだ。

先生にバレないように欠伸をひとつすると目をこすり、今しがた見た夢の内容に疑問を抱くのだった。


「‥‥何だったんだろ、あの夢。」


目尻から垂れる生理的な涙を拭いた後、頭を掻きながら悶々と回想を始める。


あれって確か‥‥病院の屋上よね?
私、何で屋上で知らない男の子と喋ってたんだろう。

何か見覚えがあるような、無いような‥‥。
モヤがかかってたみたいに情景がボヤけてたから、よく分からないや。



「おはよ、澪ちゃん。」


すると、加奈子が笑いながらヒソヒソ声で話かけてきた。


「アハハ‥‥私寝てたよね。
あ、てゆーか講義あと1分で終わりかぁ。」


ハァ、と短い溜め息をつく。

居眠りしてしまったことに対して罪悪感を感じていると、加奈子の心配そうな視線に気付く。


「大丈夫?具合、悪そうだけど‥‥。」


「あ、平気平気。
何か‥‥変な夢見ちゃってさ。」


「へぇ~、どんな?」


「病院の屋上で知らな‥‥。」


―キーンコーン


講義終了のチャイムが私の夢の話を遮ると、周りが一斉にざわめき出した。


「あ、終わっちゃったね。私のノート写す?」


加奈子はオレンジのノートを私に差し出す。


「うん、ありがと。」


「そうだ!この後、昨日言ってたお店行こうよっ。」


加奈子は楽しそうに腕を引っ張ってくる。
しかし、脳が未だに『眠い!』と叫んでいるため、どうもこれ以上のテンションは上げることが出来なかった。


「ああ~‥‥ゴメン加奈子。
今日さ、妹の宿題届けに行かなきゃならないんだよね。」


「そうなんだぁ。
私も着いて行こっか?」


キョトンと目を丸くする加奈子。
私はそれを見て途切れ途切れに喋った。


「‥‥いや、時間かかりそうだし1人で大丈夫よ。」


笑顔を作りながらそう言った後、加奈子と別れた私は喫煙所まで向かった。

先ほど見た夢の情景を、頭の奥でかすかに焼き付けたまま‥‥。 
 
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