Shadow★Man~変態イケメン御曹司に溺愛(ストーカー)されました～

恋の忘れ形見

やっぱりお姉さん

ああ‥‥いつもいいムードになると全部ぶち壊される。も～嫌！

そう思いながら頭を抱えていると、千鶴が追い討ちをかけてきた。


「僕の胸の中でさめざめと涙を流しながら抱き付いてきて
『千鶴さん、私を好きにして！』
‥‥って、もう澪ったら。
襲ってくれと自ら言っているようなものでしたよ。」


「‥‥何勝手に事実を捏造してるんだオマエは。
頭にウジ沸いてんじゃないの？」


私は呆れを込めてそう言い残すと立ち上がり、凪の部屋へと体を向ける。


「み、澪。どこへ行くんですか？
怒らないで下さいよ。」


「いや、怒ってるって言うか‥‥
あーもー帰れ！オマエ帰れよ！」


「嫌ですぅ！」


「いい歳こいてブリッコすんな。
てゆーか‥‥くっ付くなと言っておろうがー！！」


千鶴がまたベッタリと背中にへばり付いてきたので、私の怒りはとうとう噴火した。


「だってだって～。
澪が僕に無断でどこかへ行こうとするんですもん。」


効果音で『ブリッ』と聞こえそうなくらい、千鶴はブリッコしながら肩越しでわめく。


「だぁーウザったい！
凪の様子見に行くだけだから！」


「ならそうと言えばいいじゃないですか。」


「はぁ？何でいちいちアンタに断って行動しなきゃならないのよ！」


そう言いながら再び子泣きジジイを引きずり、凪の元へ牛歩で向かう。


―ガチャ



「‥‥よし、寝てるわね。」


私は凪の寝顔を見ながらそう呟くと、タオルで汗を拭き取ってあげた。

‥‥背中に漬物石を乗せたまま。 　



「何だかんだ言っても、澪はやっぱりお姉さんですね。」


「‥‥いや、別に～その‥‥。
コイツ、世話が焼けるからさ。」


千鶴が首に絡まりながらいきなりそう言うもんだから、私は少しどもってしまった。



「照れてるんですか？
‥‥まぁ、そんなところが好きですけどね。」



「何か言った？」


「‥‥いいえ。
何でもありませんよ。」



何やら背中で笑っている千鶴。
私はソイツから凪へ再び視線を落とした。


自分と同じ顔を見つめると、今までとは違う穏やかな気持ちになっていることに気付いた。


それが背中でヘラヘラ笑っている変態のお陰だということは、癪なので言わなかった。


背中に口でもあれば
『ありがとう』って言うけどね。