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恋の忘れ形見

覆い被さる変態

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「‥‥そしたらお姉と同級生になれるでしょ~?」


突然、ポツリと凪がそう呟いた。
それを聞いた私は眉をひそめる。


「‥‥何言ってんのよ。お粥作ってくる。」


「‥‥いらないってばぁ~。
いっぱい食べたんだから~。」


「そう。じゃあ寝てな。」


―バタン


ドアを閉めると、私はしばし停止した。

まさか、凪があんな風に思っているとは思わなかったから‥‥。




「凪さん大丈夫なんですか?」


「‥‥ひっ!」


すると背の高いスラリとした男が、目の前で突然話しかけてきた。


やっぱり鍵をかけても無駄なのか‥‥。


私は意気消沈したかのようにやる気を失くすと、千鶴を素通りして黙ったままキッチンまで歩いた。


「澪~、構って下さいよ。」


「‥‥うるさい。
今それどころじゃないの。」


まとわり着いてくる千鶴を払いのけながら、冷凍庫から氷を出して氷枕を作った。


「澪~。」


スライムのごとくベッタリと背中に引っ付いてくる千鶴。
こうなったら、邪魔以外の何者でもない。

それが小柄な人なら軽いもんだけど、私の背中にまとわり着いているこの背後霊みたいな変態は、自分の背丈より20センチ以上も高いので正直‥‥重い。


「‥‥重い。
そしてくっ付くな‥‥!」


痺れを切らした私は、氷枕で千鶴の頭をガシガシ殴った。


「嫌です~。
僕も熱出てきちゃいましたぁ。
看病して下さ~い。」


千鶴は息を荒くしながら私の肩に全体重を傾けてきた。
ズッシリと、取り憑かれたかのようだ。


「うるせー!凪の真似したって、看病なんかしてやるか!」


接着剤のように背中から接がれない変態。

払いのけるのも億劫になってきた私は、氷枕片手にそのままヤツを引きずって凪の元まで歩いた。


―ズルズル


畜生‥‥背中越しに何かブツブツ呟いてきて気味悪い。
あと、熱い吐息を耳元で漏らさないでくれ‥‥気色悪い。
 
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