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恋の忘れ形見
『私には関係ない』
しおりを挟む「ハァ?
‥‥まぁ、ハーフって噂だけどさぁ‥‥。
でも、だから何?って感じ。
イヤな女には変わりないっつーの。」
カスミは雨宮先生を睨み付けながら悪態を付いた。
「‥‥まぁねぇ~。」
それに対して私は必死に凪を取り繕い、上ずった声で返事を返す。
‥‥何か異様だ、この状況。
「‥‥それで、ここはチェックしておいて下さい。
卒業試験の考査範囲にする予定ですから。」
雨宮先生は長い髪を耳にかけながら、教壇の上で淡々と話している。
教室でのバカ笑いが騒音となる中、怒鳴り声のひとつも上げずに涼しい顔をしているのだ。
女子は誰1人として黒板を見ていないし、ひたすら友達と大声でお喋りしているのに‥‥まるで無視だ。
「見てよアレ。
誰も授業聴いてナイってのに、知らん顔してるし。
『私には関係ない』みたいな?
アタシ、雨宮のあーゆートコロが大っ嫌い。
外人みたいな顔してんだからさ、モデルにでもなりゃイイのに‥‥ねぇ、凪?」
「あ、うん。ね~。」
うわぁ‥‥スゴイ言われ様だなぁ。
とりあえずこの綺麗な先生は、学生から嫌われているのだと理解した。
「で?」
「えっ‥‥何?」
カスミは間を置くことなく話題を振ってきた。
「総大くんとは調子どーよ?」
カスミがニヤニヤしながらそう言ってきたので、さすがにこの話の内容は読めた。
『ソウダイくん』とは凪の今の彼氏の名前だ。
何度か見たことあるし、これくらいのことは知っている。
しかし、『調子どーよ?』と私に聞かれたところで、それに何と答えれば良いのかは見当もつかない。
とりあえず‥‥当たり障りの無い適当なことを言ってこの場をやり過ごそう、という作戦に私は出た。
「まぁ‥‥そこそこぉ?
‥‥みたいな~。」
それで出た台詞がコレ。
我ながら不器用だなぁ~と、ヒシヒシ感じるよ‥‥ハァ。
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