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恋の忘れ形見

カスミ

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‥‥妹のオシャレは、想像を絶するほどに大変だった。

やれ髪を巻く時の角度が違うだの、アイラインが0.5ミリ足りないだの、チークの入れ方が違うだの‥‥。

風邪が治ったら覚悟しておけよ!と私は心の中で叫んだ。


―1時間半後


鏡の前に立つと、思わず目をこってしまった。
なんと、目の前に妹がもう1人いるではないか。

本当に瓜二つだ。
鏡の前に立っているこの凪が、私だとは誰も思わないだろう。
例えそれが親であっても。

まぁ、一卵性の双子は同じ人間が2人いるようなもんだしね。


ついつい感心しながら鏡を凝視していると、凪がニコニコしながらウットリと私を見つめてきた。

寝起きで髪も巻いておらず、スッピンの凪はまるで普段の私ようだった。


「超~~可愛い!完璧!
やっぱ私はこうでなきゃ!ゴホッ。」


「アンタね‥‥私はアンタじゃないっつーの!
てゆーか自分のことを可愛いって言うなよ、全く。」


色々と突っ込み所は満載だったが、時間が迫ってきたのでこれ以上は口を閉ざした。

私は凪のバッグを持つと、凪のブーツを履いた。

何か‥‥頭のてっぺんから足のつま先まで、凪って感じ‥‥。


「でも~マニキュアが~私じゃない~‥‥。」


「うるさい!それくらい我慢しな!
で、もう1回確認するけど教室は202で、学生番号は064012ね?」


私はピンクの可愛いマフラーを首に巻きながら、玄関で凪に確認を取る。


「うん!あ、席はね~窓際の1番後ろで、カスミっていう子の右隣ね!
黒髪に白メッシュの派手な子だから、すぐ分かるよ~。」


淡々と放たれたその凪の言葉を聞いた時、心臓が奇妙に大きく揺れた。


―『カスミ』‥‥?


いや、偶然だ。
何を動揺してるのよ私‥‥。


「お姉、大丈夫?どうしたの‥‥ッゲホッ、ゲホッ‥‥!
まさか、お姉も熱あるの?」


ハッとして頭を上げると、凪が体を震わせながら私を心配してきた。


「いや、何でもない。それより寒いから早くベッドに戻りな。
‥‥じゃ、行ってくる。」


焦点が定まっていない妹にそう言い残すと、私は自宅を出た。
 

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