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恋の忘れ形見

僕はいつだって、澪を見失ったりしません。

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「眩しい‥‥。」


昨夜寝る前にカーテンを閉め忘れたので、窓から突き刺さる太陽の光が目にしみた。


今日は講義も無いし、もう少し寝ていようかと思っていたのに‥‥。
お陰ですっかり覚醒してしまった。


ベッドから下りて煙草を1本。





煙を吸い込むと喉がヒリヒリと痛んだ。



「ヤバ‥‥風邪引いた。」


少々咳き込むと、そう確信した。

これはこじらせる前に治しておかなければ‥‥。


何故なら私は呼吸器が弱いので、単なる風邪で喘息を起こしかねないからだ。


‥‥なら煙草を吸うなって?

ハイ、ゴメンなさい。

禁煙はしようと思ってるんだけど、なかなかね。



「おねぇ~‥‥!」


煙草を灰皿に押し付けていると、ドアの向こうから妹の猫なで声が聞こえてきた。

何だろう?
いつもは用があったら、ノック無しで私の部屋に入ってくるのに。

私はそう疑問を抱くと、億劫に凪の部屋へと足を運んだ。


「何よー?」


凪の部屋のドアを開け、ぶっきらぼうにそう尋ねれば、凪のガラガラしたかすれ声が布団の中から微かに聞こえる。


「おねぇ~風邪引いた~‥‥。」


「マジで?」


凪はよっぽど辛いのか、真っ赤な顔をしながら肩で呼吸をしていた。


「講義行けな~い。」


「はぁ!?アンタ、もう単位ヤバイんじゃなかったっけ?」


そう、凪はサボれる講義はギリギリまでサボるという親泣かせな主義を持つ。
なんとも不真面目なヤツなのだ。


「だって~、39度もあるんだもん‥‥熱。」


「はぁ‥‥どうすんのよ?
普段の行いが悪いから、いざって時に困るのよ。」


そう言いながら私は凪のオデコに手を当てた。


熱い‥‥。
あーあ、本当にどうするのよ講義‥‥。
 

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