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恋のライバル

もう澪ってば、激しいんですから‥‥。

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「え、ちょ、違う!違うから!
首を絞めてただけだから!」


私が慌てながら素早く千鶴の上から離れると、凪は口をニンマリさせて靴を脱ぎ始めた。


「ハイハイ。仲がよろしいことで。」


「ちっが~う!!」


凪の両肩を掴みガクガクと前後に揺らしながら反論すると、その横で千鶴は髪をかき上げながら疲れたような溜め息をついた。


「もう澪ってば、激しいんですから‥‥。」


立ち上がった千鶴の襟元は、何故かグチャグチャになっていた。

え、ちょっと待て‥‥。
何でシャツが乱れているんだよ。
ていうか、さっきネクタイ整えてただろオマエ。


「あの~、私‥‥もう1度彼氏のトコ戻ろうか?」


凪は凪で顔を赤らめながら、千鶴の言ったことを真に受けている。


「いやぁー!戻らないでぇー!!
‥‥あ、そういえば。」


私は立ち去ろうとする我が妹に必死にすがりついた後、ドアを見て突然重大なことを思い出した。


「凪!玄関の外に中学生ぐらいの男の子いなかった!?」


変態千鶴のせいで、すっかり葵くんのことを忘れていたのだった。


「え~?誰もいなかったけどぉ~?」


顔をキョトンとさせると、凪はマスカラだらけのまつ毛で瞬きした。


「そっかぁ‥‥ならいいんだけどね‥‥。」


私は凪の肩を掴んだまま、うなだれた。


「何、誰なのよー?」


凪は私の手を自分の肩から払うと、興味ありげな顔で聞いてきた。


「いや、あの‥‥。」


「泥棒猫ですよ、凪さん。」


おい、黙ってろよ変態!

私は唇を噛みながら千鶴を睨み付けた。


「泥棒猫ぉ~?
千鶴さん、何ですかそれぇ。」


凪はそう言った後に『ハァー?』と付け加えると、リビングに向かって歩き出した。

 
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