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恋のライバル
ついにブーツまで盗まれる
しおりを挟む顔を余計に赤くさせながら、私は床を見つめて思案した。
何なの‥‥この状態。
目の前にいるのは、千鶴よね?
自分が怒りもせず怒鳴りもせず、ましてや殴りもせずに千鶴とこんな普通の会話を交わすのは、初めてのデートの日以来だ。
神様‥‥どうかこのまま、千鶴が大人しくしていますように!
と、私が切実に神様に祈った時だった。
千鶴の傍らに、先ほど私がぶん投げた革のブーツが目に入ったのだ。
「千鶴、ブーツ‥‥。」
―シュッ!
『玄関に並べ直すからこっちに渡して』と言いかけると、千鶴は光の速さでブーツを自分の背中に回した。
何、今の早業‥‥!
もしかして隠したつもりか?
「いや、ブーツちょうだいってば。」
「ブーツ?何のことですか。」
しらばっくれた‥‥!
私はガクッと落胆したと同時に、千鶴への淡い期待を蒸発させた。
神様‥‥さっきの祈り、届かなかったんですね。
「とぼけるな。ブーツだよ、ブーツ。さっきアンタに投げ付けた物体のこと。
ちなみにたった今、背後に隠したモノがそれ!」
私はあくまで冷静な態度を取る。
「ああ‥‥この、シトラスの芳香がするブーツですか。」
そう言うなり、千鶴はヒョイとブーツを背中から出した。
「シトラスって‥‥!
そんなに酸っぱい臭いした!?
じゃなくて!!‥‥まさか臭いを
嗅・い・だ・の・か?」
「はい。」
その簡潔な返答を聞くやいなや、ゴウッと激しい音を鳴らしながら私の怒りの業火は着火されてしまった。
せっかくいいムードだったのに!
しかし私は、飛び出す寸前の拳をなんとか収めた。
「うん。そう、ソレ。返して?」
「嫌です。」
「どうしてかな~?
もしかして、顔面に投げ付けたのを怒ってるのかな~?」
私は口の端をビクビクと痙攣させながら、必死に声を穏やかなモノにするよう努めた。
「怒ってなんかいませんよ。
だから、これ下さい。」
―ニッコリ
キラキラキラと千鶴スマイルが発動された瞬間、私はヤツの髪を乱暴に鷲掴みした。
―ガシィ!
「『下さい』だぁ~?
持って帰ってどうするつもりだよ。履くのか?
女モノのブーツを履くのか?
残念ながらサイズ合わないわよ。」
目を見開きながら威圧的にそう言うと、髪を掴み上げられオデコを全開にした千鶴は、満面の笑みでこう言った。
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