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恋のライバル
涙を舐められる
しおりを挟む「知らないに決まってるでしょ。
アンタのこと、よく知らないんだから‥‥。」
そういえば私は、千鶴のことを何も知らない。
知っていることと言えば、
お手上げなくらい変態なところ。
イラつくくらい意味不明なところ。
そのクセ、立ち振る舞いは至って上品なところ。
だけど今の千鶴は、それらが嘘みたいに思えるほど普通の人だ。
「じゃあ知って下さい。
‥‥もっと。」
そう言った後、千鶴は私の肩をようやく離した。
―ドキッ
面と向かった瞬間、不覚にも心臓が跳ねた。
千鶴の整った綺麗な顔が、目と鼻の先にあったからだ。
慌てて私は目を反らすと、千鶴は力が抜けたようにしてニコリと微笑んだ。
「‥‥フッ、アハハハハ。」
‥‥じゃなくて、笑い出した。
「ちょ、何がおかしいのよ!」
「‥‥ハハッ、はぁ~‥‥。
澪、鼻水出てますよ。」
「え、嘘っ!?」
私はその衝撃的な言葉を聞き、急いで自分の鼻の下に手を当てた。
「ちょっと、嘘つくなよ!
出てないから!」
強がりな台詞とは裏腹に、鼻水出てなくて良かった‥‥とシリアスな状況をぶち壊すようなことを思ってしまった。
何だかんだで、私は少し安心し始める。
「嘘ですよ。
涙は出てますけど‥‥。」
千鶴は優しく微笑みながらそう言うと、自分のスーツの袖で私の頬を拭いた。
「‥‥馬鹿、スーツ汚れるっ。」
「別に構いませんよ。
ヘドロが付こうが、新しいのを買えば済むことですし。」
「ハァー!?ちょっと、そこまで汚くないわよ!失礼ね!」
そのヘドロ発言にムカついたので、千鶴の腕を払いのけた。
だけどその代わりに、千鶴の顔が私の顔に急接近してきた。
「‥‥‥‥なっ!」
ペろっと、涙を舌ですくうようにして目の下辺りを舐められた。
突然の不意打ちに、私は赤面してしまう。
「今のも嘘です。汚いわけ、ないじゃないですか。」
顔をクシャッとさせながら、千鶴は『やれやれ』と言わんばかりに困ったような表情をさせた。
それが何だか可愛いと思ってしまったのは‥‥
死んでも言わないけどね。
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