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恋のライバル

澪、泣いているんですか?

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背中に当たるドアの向こうではまだ、葵くんがうずくまっている‥‥。
そう考えると、葵くんと同じような格好で私はそのまま玄関にしゃがみ込んだ。



「澪‥‥どうしたんですか?」


放心している私に、心配顔の千鶴が話しかけてきた。
だけど、それに返事をする気力も無かった。

だから自然と無視する形になったけど‥‥まぁ、今更コイツに気を使う必要もないしね‥‥。


私は完全に自暴自棄に陥っていた。

恐らく葵くんに『消えて』と言われたことが、あまりにも傷付いたのだろう。



―その言葉は前にも一度、大好きだった人に言われたことのあるモノだったから‥‥。


腕の中に顔を埋めると、勝手に涙があふれる。


本当は‥‥葵くんに可哀想なことをしたとか、大人気ないことをしたとか、そんなことで胸を痛めているんじゃないんだ。

ただ、その吐き捨てられた『消えて』という言葉に、傷をえぐられ泣いているだけだった。



「‥‥‥‥っ。」



喉の奥で声を押しやりながら耐えた。


千鶴なんかの前で、泣けないし。



そして、ただひたすらダルマのように丸まっている私の傍に、千鶴が近寄ってきた。



「泣いているんですか?」


「‥‥っ!」


その千鶴の淡々とした台詞を聞いた瞬間、恥ずかしさと共に怒りが込み上がった。

冷静に自分の状況を分析されるのは、結構キツイ。



「‥‥うるさい。
アンタに関係無いでしょ‥‥。」



つい先ほど言われた言葉と同じソレが、無意識に口から出る。


腕の中に顔を埋めた私の視界は真っ暗だったが、すぐ傍に千鶴の気配を感じた。


この時ばっかりは、本当に独りにしておいてほしかったのに‥‥。




「‥‥どっか行って!!」



私は思わずヒステリックに声を荒げてしまった。

ああ、これじゃ顔が見えなくても泣いているのはバレバレだ。

声が震えてるもの。
 
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